MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

VNV Nation "Matter + Form"

Matter + Form

Matter + Form

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 イングランド出身のフューチャーポップ/EBMユニットの5thアルバム(2005年)。

 

 ほぼ恒例となっているオープニングの小品インストからして何かちょっと雰囲気が違うなと思ったら、本当に違っていた…!?実質1曲目でありシングル曲の「Chrome」がまず、ボーカルを前面に出しフューチャーポップらしいシンセが抑えられエッジの効いた、以前までの彼らと比べると明らかに異質な領域ながらも格好いいサウンドにいきなり魅せられました。続く「Arena」は耳馴染みのある爽快なシンセサウンドが全体を牽引する一方で、リズムは明らかに8ビートでロックなアグレッシブさが。前作にて強化したピアノ/クラシックやアンビエントな楽曲はしっかり引き継ぎつつ、ボーカルなしのストイックな前傾エレクトロダンスの二連作や、ハードタッチなインダストリアルダンスの「Entropy」を筆頭に、四つ打ちダンス系の楽曲もそれまでにない攻めのアプローチが目立つなど、脱フューチャーポップと言える動きが一層進められた作品と受け取ることができます。前作においても、一つ打ち立てた前々作「Empires」から脱却するような傾向があったけど、今回は前作含めそれまでの音楽資産を総動員し、それまでの何一つも否定することなく新たな境地へ進むことに成功しているんじゃないかと。曲ごとの特性の強化という方針は前作同様と言えるけど、しっかり整地され全体の足並みが揃っているので、散漫に感じることなく一気に聴けてしまいます。初めて外部プロデューサーを迎えたのも功を奏したのかも。自分たちが開拓し名づけたフューチャーポップという枠組みに甘んじることなく、 傑作を更新し続ける彼らの底力を見せつけた一枚。

 

 

 彼らのこれ以前の作品について書いた記事が結構古かったので、今回を機に内容を見直して少しだけ改稿しています。よろしければ合わせてどうぞ。