MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

BUCK-TICK / 或いはアナーキー

或いはアナーキー(通常盤)

或いはアナーキー(通常盤)

 

 5人組ロックバンドの19thアルバム。

 

 先行シングル「形而上 流星」にしても本作にしても、タイトルにまず妙に気を引かれますね。しかも本作、本来は「(  )-或いはアナーキー-」と "表現不可能なモノ" の副題的存在なんだとか。入り組んだ設定にそそられます。そしてテーマは "ダダイスム" と "シュルレアリスム" 。なるほど、わからん。初っ端の「DADA DISCO -G J T H B K H T D-」からして、演奏も歌唱も歌詞も人を食ったようなオープニングでクラクラ。そういった暗号めいた仕掛けや芸術/思想に関連するワード(「キャバレー・ヴォルテール」とか)が全体に散りばめられ、サウンドの方も近年ではやや控えめだった実験志向やエレクトロ/デジタル要素が盛り込まれている部分にまず目(耳)がいきます。それは15th「天使のリボルバー」以降、分かりやすさに軸を置いてきた展開を自ら放棄するかのようでもあり、それを "(既存の常識の)破壊" という前述のテーマにもなぞらえているようです。しかしそこに固執した難解な作品という訳では全くなく、多彩な楽曲があり、その聴き心地はあくまでもポップ。こんな音楽を平然と(見えるように)やってのけるのは、もう脱帽と言う外ない!粘っこいシンセベースとハンマービートで珍しく?実直にEBMへアプローチした「Devil'N Angel」は特に好きな1曲だし、森岡賢が弾くピアノと共に逆説的に希望を歌う「世界は闇で満ちている」から詞曲ともに広大な「ONCE UPON A TIME」へ続き、アルバム名じゃないけど "得体の知れないモノ "が櫻井敦司に憑依したかのような「無題」でその空気が塗り潰され、「形而上 流星」の別アレンジ版でエンディングという終盤の流れも、数あるB-T作品の中でも格別で、間違いなく傑作だと確信せずにいられない。