MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

VNV Nation "Empires"

Empires

Empires

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 イングランド出身のフューチャーポップ/EBMユニットの3rdアルバム(1999年)。

 

 フューチャーポップ界においても名盤とされる彼らの出世作。前作において確立していた彼ららしいサウンドを作り上げる公式のような要素一つ一つが着実に強化されており、まるで一つの完成形に向かっているかのよう。バスドラムの強調を減らしたリズムトラック、煌びやかさ・ダークさ・クラシカルなフレーズなどを使い分け奥行きを作り上げるシンセのバリエーションなど単調にならない配慮だったり、更に磨きをかけた哀愁のメロディや、それをよりポップに聴かせることに振り切れた曲構成、インスト楽曲をもはや作品の補足ではなく主役に推し出してきたり(名曲「Saviour」のこと)、インダストリアル/EBM上がりの刺激的な仕掛け等、一歩足りなかった(と今なら思える)部分を改良して順当に高みに上っています。特に、抑揚がないのにとても感傷的に響くメロディが素晴らしく(個人的にこれを「省エネメロディ」と命名したい)、ボーカルの無表情さや薄い存在感(決して下手という意味ではなく)が逆に良い対比になっていて味わい深さすらも感じます。フューチャーポップというジャンルは "トランス、シンセポップ、EBMの組み合わせ" とも表現されるようですが、この作品はそこにかなり早く、かつ高い完成度で到達した一枚と言えそう。個人的にもApoptygma Berzerk「Welcome To Earth」(2000年)やAssemblage 23「Storm」(2004年)と並んでフューチャーポップというジャンルの何たるかを教えてもらった作品であり、その中でリリースが一番早いところからも、彼らが一歩先を行っていたのではと思わされます。