ロンドン出身のRaymond Wattsによるインダストリアルプロジェクトの1stアルバム(1988年)。
80年代半ば頃にはPsychic TVやEinstürzende Neubautenのエンジニアを務め、KMFDMのメンバーとして活動するなど多方面で活躍していたRaymond Watts。そんな彼が1988年に発足したソロプロジェクト・PIGの記念すべき1作目で、何かと日本びいきな彼のリリース作品群において、本作も例にもれず日本盤が後年にリリースされています。その内容は、師弟関係にあるというJG Thirlwellこと偉大な先駆者・Foetusをなぞるようなアプローチが特徴。呟いたり笑ったりするような低音が映えるボーカルや、ジャズやフォークの要素や映画音楽っぽさなどを巧みに組み込んだ多彩さがあり、その上で初期のFoetusのようなニューヨーク・アンダーグラウンド的なノイジーさや荒っぽさは無く、実にスマートでポップなニューウェイブ寄りのロックとして完成されています。後にFoetusから受け継いだクラシック/オーケストラの手法を強化したり、時代とともにメタルギターの露出も高まっていくけど、この1作目の時点でPIGの音楽的方向性がかなり定まっているのは驚くべきポイントだし、既に専門的なキャリアを積んでいるためか自在にユーモアを入れ込んだり時に緊迫感を走らせたりと、腰の据わった余裕すらも感じさせ、大器の片鱗を見せるような仕事ぶりには思わず感心させられます。同時期にデビューしたNine Inch NailsのTrent Reznorにも決して見劣りしない才能を証明する一枚ではないかと。
