US/イリノイ出身のAl Jourgensenを中心としたインダストリアルバンドの3rdアルバム(1988年)。
前作『Twitch』のツアーから加入したベーシスト・Paul Barkerとの2人組体制となって制作された初のアルバムで、Paul Barkerと同じ出自でありMinistryの黄金期を支えたドラマー・Bill Riefllinも同じくここから協力しています。前作『Twitch』のレコーディングには苦難や悪感情もあったものの、その出来に非常に大きな手応えを得たAl Jourgensenは、新たな相棒と共にまずPailheadや1000 Homo DJsなど数々の変名バンドやRevolting Cocks、Lardといった別プロジェクトの課外活動に着手。そこでの実験(お遊び?)を経た知見を更に注ぎ込むことで、自身が思い描く理想を体現した、バンドの本領発揮となる本作の結実に至ったようです。根幹には前作にて完成を見せたジャンクでマシーナリーなEBMサウンドがあり、そこにスラッシュギターを取り入れることでより音圧や迫力を武装強化。これによってインダストリアル/EBMの可能性を拡張したことがそのまま“インダストリアルメタル”というジャンルの先駆けとなったとされています。特にギターを全面に出した開始3曲の存在感は圧巻で、メタルというよりはどちらかと言うと初期Killing Jokeを早回しにしたようなハードコアだけど、荒々しさと生々しさが強烈に垂れ流されるその音像は非常にスリリング。以降の楽曲はEBM寄りのビート感覚を軸にしたものが中心で、ギターを補助/効果音的に使用したロック/バンド感のような感触がより際立ちながらも、全体的にジャンクな質感や怨念のようなサンプリングが混沌と絡み合うサウンドが非常に悪辣。そんな一切の甘さが排除された本作は、EBMの金字塔とされ未だ評価の高い前作、インダストリアルメタルとしてより完成度を高める次回作に挟まれる位置づけに結果としてなったものの、その狭間/境界にしか存在しえない唯一無二の音世界が広がっていると感じるし、他のどんなに激しく重い音を出すバンドを聴いた後でもその衝撃は簡単に薄れるものではないとも思います。間違いなく聴く人は選ぶけど、数多のバンドに影響を与えたインダストリアル史に残る歴史的大傑作であることに疑いようはありません。
EBMクラシックの2ndとインダストリアルメタル史上有数の名曲を封じ込めた4thの間にあって、意外と取っ掛かりがないと感じるアルバムかもしれないけど
— ビアードです (@whereevildwells) 2024年4月15日
危ないエレクトロニックミュージックが聴きたいなら強く薦めたい作品です
こちらはX(旧Twitter)上で本作について言及されたフォロワーさんのポスト。自分にとっても強く頷ける内容だったので(というか本記事を要約したらほぼイコールな内容!)、今一度本作に思いを馳せ、以下の引用リポストをさせていただきました。
自分にとってはこの作品に「再会」したときにこの手のジャンルの真髄に足を踏み入れた感覚と大いなる沼の入り口に立てたような実感を得たこともあり、自分の音楽観の形成に絶対的な作用を及ぼした特別な一枚だったりします。
もう少し詳しく言うと、自分はまずニューメタルやそれに近いバンドを先に好んで聴いていたため、インダストリアルメタルというジャンルに興味を持ち始めた当時は本作の価値がそれほど分からず、初めて聴いたときは正直に言うと「何かオーラのようなものは感じるけど、先駆者としての伝説があるから評価が高いんだろうな」程度の感想でした。
その後、 インダストリアル/EBMを聴き広げていく中で、激しく重い音を出すバンドの刺激にも慣れてきて、何かもっと強烈な出会いはないものか、なんて考えながら久しぶりに本作を聴き返すと、そのとき自分が求めていたものがそこにあったという。単純な激しさ重さとは方向性の異なるこのジャンルならではの根本的な不穏さや過激さとでも言うのか。ある程度経験値を積んで帰って来たことで気づくことができたのかも知れないし、あるいは単に時間を置いた効果なだけかも知れないけど、いずれにせよ体中に電気が走ったような衝撃を受け、その瞬間にそれまで自分の中では何度か聴いてもそれほどグッとくるものがなかったような作品や、いまいち興味の持てなかったグループが一気に輝いて見えてきたりと、自分の音楽観がガラッと変わったような感覚を覚えました。
それをポスト内で「再会」と表現したのですが、こういった経験は人生でもそう何度とないもので、今の自分に繋がる大きな影響を及ぼしたとても特別な一枚になったというお話でした。
