MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Marilyn Manson 『Antichrist Superstar』

 US/フロリダ出身のインダストリアルロック/オルタナティブメタルバンドの2ndアルバム(1996年)。

 

 前年作EPのヒットにより勢いづいた彼らが、多くの苦悩や困難を乗り越え産み落とした大出世作。今に至るまで最高傑作との呼び声も高く、なんならこの手のジャンルの代表作に数えられることもしばしば。長く苦しい製作期間の中でのメンバー間の関係の悪化や、そんな状況をあえて持続させるために意図的にコンディションを落としたり薬物に溺れたり…結果、創設時からのメンバーの脱退、共同プロデューサーであるTrent Reznorとの確執の発生やDave Ogilvieの離脱…半分は自分で蒔いた種な気もするけど、そうやって自分たちに自傷行為を図るかのような正気の沙汰ではない状況を反映させ、最終的には狂気の沙汰のような本作が誕生したという流れのようです。ここまでの作品にみられた破壊的/攻撃的、あるいはドロっとした不気味さ、そういった音像表現の強化だったり楽曲自体の底上げがまず前提にあって、特に代表曲「The Beautiful People」含む前半4曲目までの勢いはとてつもないものが。この辺り、色物っぽさや変化球ではない“正面切った楽曲そのものの力”で聴衆を惹きつける豪腕さが新たに備わっています。そしてヒステリックだったりグロテスクだったり、時にはまるで悲哀を吐露するかのようだったり…さらに幅の広がったボーカルの歌い分けと、奇怪さや歪みの加速、またそれだけでない詩的な旋律なども操るサウンドが絡み合い、かつてないまでの感情の動きや迸りを表現し、3つの章に分かれたコンセプトを丹念に描いていきます。その分、楽曲の多さがやや中弛みを招く部分は否めないけど、全体を通した臨場感と華々しさは特筆すべきもの。言葉の悪い例えだけど、以前が「いたずら小僧」「小悪党」だとしたら今作でタイトル通り一気に「世紀の大罪人」「巨悪の象徴」に上り詰めたようなイメージ。商業的にも成功し、US国内での人気や悪名・社会的な影響力も一気に増大したことが逆にコアなリスナーを敬遠させる要因にもなった気がするけど、本作がオルタナティブロックやインダストリアルロックの歴史において燦然と輝く名盤に違いはないかと。