MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

101A "unknown"

f:id:xnoybis:20210708120441j:plain

 3人組ポストロック/シューゲイザーバンドの6曲入りCD(2008年)。

 

 彼らが6曲入り──というかフルサイズではない作品をリリースするのは2作目だけど(とはいえ1作目は「Before 1st」という位置づけのものだけど)、本作は「シングルでもミニアルバムでもない "not album" 」と公式に解説された、これまたやや特殊な性質の作品のようです。その内容は新曲2曲+カバー1曲+インスト1曲+(初の)リミックス同2曲という、タイプの異なる楽曲のひしめく小品で、前作で晴れて3人体制(完成形)での再出発を遂げた次の一手として、特定のコンセプトを定めずに曲を寄せ集め形にしたものと言えそう。儚くも鋭い、期待を裏切らないポストロック新曲や、悍ましさすら感じさせる原型を留めないPortisheadのカバー「glory box」、ノイズインダストリアルなインスト「ZOAZOA」、インダストリアル系アーティスト/エンジニア・Luke Chaosが手掛けた「come down」のヘヴィなリミックス(特に "Unknown Fire mix" と題された方は激重のインダストリアルダブで痺れる!)と、バンドの特異点や魅力を複数の側面から端的に伝えることに成功している一枚。案外入門用にも良さそうだけど、彼らの作品は基本的に入手困難なのでお勧めはしづらい。しかし本作の象徴的な1曲目「0 [rei]」は後のベスト盤に収録され、また2020年からは配信でも聴けるようになりました。

 

Foetus / Thaw

Thaw

Thaw

Amazon

 オーストラリア出身のJG Thirlwellによるアヴァンギャルド/インダストリアルプロジェクトの5thアルバム(1988年)。

 

  "Foetus Interruptus" 名義でリリースされた、「手にした日から、誰にだって、プロ感覚でシンセが弾けるようになる画期的なシンセ講座ができたんだ!!」の有名な文句でお馴染みの一作。活動の拠点をロンドンからニューヨークに移しての1作目で、エンジニアリングにはSwansやSonic Youthらを手掛けたMartin Bisiがクレジット。元SwansのRoli Mosimannと結成したWisebloodの活動を経た後ということもあり、その辺り──NYアンダーグラウンドの文化/人脈の影響が十分に成果として上がっています。最も耳につくポイントは、とにかく重い。とりわけリズムトラックを中心に低音の層の一音一音がビシバシとお腹に響くような重さだし、明るく狂っていたかのような過去作の歌い方から、より迫真に迫るかのようなボーカルの変化もあり、聴こえてくる全ての重さ・密度・濁りっぷりが尋常じゃない。その上で、知性と本能を同時に封じ込めるような雑多な音楽構築センスは健在だし、戦々恐々としたインダストリアル・オーケストラな複数のインスト曲も、決して勢いを分断することなくアルバムの要所に散らばり、全体でひとつの凶暴な音塊を形成するかのように収まっています。画期的なシンセ講座かどうかはともかくとして(えっ)、名作とされる「Hole」「Nail」のいずれにも劣らない傑作だし、なんなら凄みがダイレクトな分、意外とその中では一番入りやすいかも?とすら思います。

 

Skrew / Burning In Water, Drowning In Flame

Burning in Water

Burning in Water, Drowning In Flame

  • アーティスト:Skrew
  • 発売日: 1999/04/06
  • メディア: CD
 

 US出身のインダストリアルメタルバンドの1stアルバム(1992年)。

 

 元々は別のバンドで活動していたAdam GrossmanとDanny Lohnerを中心に結成されたバンド。Danny Lohnerは別の名義でも活躍していたり、後にギタリストとしてNine Inch NailsMarilyn Mansonの制作に関与したり、またベーシストやプログラマーとして他の界隈の著名ミュージシャンにも広く関わった凄腕の人物。ただ、Skrewとして活動したのは本作限りのようです。そんな立ち上がりの1作目。どう聴いてもMinistryです、本当にありがとうございました。や、このヘヴィでメタリックなギターリフと無機質に響き渡るマシーナリービートはドンピシャすぎる。しかし本作の場合ただのフォロワーというよりも、そもそもMinistryのAl Jourgensen、Paul Barker、Mike Scacciaが制作に関わっているようで、そりゃそうなるかというか、これも一種のお墨付き(?)と言っていいんだろうか。注意深く見ると、Ministryの冷たさや鋭さの再現というよりも、全体のバンド感や一体感でモリモリとグルーヴメタルのように突き進むアグレッシブさが特徴的か。10曲目「Poisonus」では突如スクラッチを用いたラップメタルも披露(謎)。ミッドテンポの多さと薄味な作り&無骨さで内容も位置づけも地味な印象の拭えない一作だけど、彼らの中では最も評価も高く好セールスの作品でもあるんだとか。Ministryファンならどうぞ。

 


 先に書いていた(すっかり忘れていた)2ndアルバムの記事はこちら。よろしければ合わせてご覧ください。 

Decree "Moment Of Silence"

Moment Of Silence

Moment Of Silence

  • アーティスト:Decree
  • Minuswelt
Amazon

 カナダ出身のFront Line Assembly等で活動する音楽プロデューサー・Chris Petersonを中心としたインダストリアルユニットの2ndアルバム(2004年)。 

 

 元々はツアーメンバーで、1997年からは制作にも携わったFront Line Assemblyを(一時的に)離脱した時期に制作されたアルバム。自身以外の制作メンバーも前作とは入れ替わっている模様。音楽的には基本的に前作を踏襲したもので、強烈なノイズやノイズギター、怒号や呟きのようなボーカルを激しいリズムトラックが蹂躙していくという刺激的かつ攻撃的なインダストリアル。狂気的にアンビエントを放出するパートも健在ながら、ノイズアンビエントな方向性だった前作とは変わりジャケットから連想できるような(?)ダークアンビエントに舵を切っており、静寂の中に地鳴りのような轟音が響き渡り世界が闇に呑まれるような不気味さ、ひいては退廃的な世界観を強化しています。これはこれで良いのだけど、ブレイクビーツを走らせたりしてガリガリと進むパートときっちり線引きされた構成はいささかウェルメイドな印象もあり、音楽的に近そうな初期Numbなんかと比べると、どこか頭の良い人が計算して作り上げたような小奇麗さを感じる部分も。 個人的にはダークアンビエントにそこまで詳しくないので、この音の迫力だけでもかなり満足できるんだけど、前作の方が凄身を感じたっていうのは否めないし、もっと筋金入り(?)のインダストリアルリスナーには意外と物足りないかも。

 

 

 前作の紹介記事はこちら。よろしければ合わせてご覧ください。

SMAP 「全アルバム」 ミニレビュー&おすすめ紹介

f:id:xnoybis:20210401081906j:plain

 出典:SMAP - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/SMAP

 

 今はなき国民的アイドルグループ・SMAPの全アルバム(たぶん)のプチ紹介記事です。読んで字の如くだし、長くなりそうだしで、前置きは不要ということで。では、どうぞ!

 

続きを読む