MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Decree "Moment Of Silence"

Moment Of Silence

Moment Of Silence

  • アーティスト:Decree
  • Minuswelt
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 カナダ出身のFront Line Assembly等で活動する音楽プロデューサー・Chris Petersonを中心としたインダストリアルユニットの2ndアルバム(2004年)。 

 

 元々はツアーメンバーで、1997年からは制作にも携わったFront Line Assemblyを(一時的に)離脱した時期に制作されたアルバム。自身以外の制作メンバーも前作とは入れ替わっている模様。音楽的には基本的に前作を踏襲したもので、強烈なノイズやノイズギター、怒号や呟きのようなボーカルを激しいリズムトラックが蹂躙していくという刺激的かつ攻撃的なインダストリアル。狂気的にアンビエントを放出するパートも健在ながら、ノイズアンビエントな方向性だった前作とは変わりジャケットから連想できるような(?)ダークアンビエントに舵を切っており、静寂の中に地鳴りのような轟音が響き渡り世界が闇に呑まれるような不気味さ、ひいては退廃的な世界観を強化しています。これはこれで良いのだけど、ブレイクビーツを走らせたりしてガリガリと進むパートときっちり線引きされた構成はいささかウェルメイドな印象もあり、音楽的に近そうな初期Numbなんかと比べると、どこか頭の良い人が計算して作り上げたような小奇麗さを感じる部分も。 個人的にはダークアンビエントにそこまで詳しくないので、この音の迫力だけでもかなり満足できるんだけど、前作の方が凄身を感じたっていうのは否めないし、もっと筋金入り(?)のインダストリアルリスナーには意外と物足りないかも。

 

 

 前作の紹介記事はこちら。よろしければ合わせてご覧ください。

The Dreaming / Puppet

Puppet

Puppet

  • アーティスト:Dreaming
  • Epochal Artists Rec.
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 元Stabbing WestwardのChristopher Hallを中心としたオルタナティブロック/インダストリアルロックバンドの2ndアルバム(2011年)。

 

 結成から最初のフルアルバムまでは約7年もかかった計算だけど(なんせ前身バンドのStabbing Westwardの解散前から始動しているようなので)、2作目である本作は1作目から約2年半ぶりと割と順当な間隔。その間にベーシストの入れ替わりがあったようだけど、むしろそこじゃない部分が大きく変化。勢い重視のギターロックという基本線はそのままだけど、唯一決定的に違うのが前作ではほとんど皆無だったストリングスやシンセなどエレクトリックな要素の追加で、導入部やギターリフの後ろなどで味つけ程度に薄っすらと鳴るばかりでなく、前奏やサビに大きく組み込まれ全体を彩ったり、内部に取り込んでグルーヴのベクトルを変えたりとあちこちで耳につく重用っぷり。1作目は明らかにそういったものを排除し、ザクザクとしたギターリフと勢いでとにかく突っ走る音楽だったので、この新バンドでは脱エレクトロニックというかそういう方向性なんだと一旦認識していただけに「あ、封印したわけではなかったのね」と意識が引き戻される思い。もしくは試行錯誤中なのか。こういう方向性は嫌いではないし、実際彼らの過度なまでの感情的な歌メロを放出するスタイルを更にドラマチックにもしているけど、一方で勢いが削がれたことで単調さも浮き彫りになり、曲単位ならまだしもトータルだと物足りなさを僅かに感じなくもない。前作比だと足し算的な発想の内容の筈なのに。

 

 

 1作目の紹介記事はこちら。よろしければ合わせてご覧ください。 

Stabbing Westward "Dead And Gone"

Dead and Gone

Dead and Gone

  • Drugstore Records
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 アメリカ/イリノイ出身のオルタナティブメタル/インダストリアルロックバンドのEP(2020年)。

 

 2002年に解散した彼らがバンド生誕30周年にあたる2016年に再結成し、新作音源としては2001年の4thアルバム以来なんと約19年ぶりとなる本EPが2020年にリリース。再結成については以前から噂やちょっとした動きなど小さな伏線がいくつか示され、いざ再結成されても(ボーカリスト・Christopher Hallらが2003年に開始したバンド・The Dreamingの活動もあったせいか)単発の活動が多く、少しずつ歩を進めていたようで、いかにも助走の長い彼ららしい。そしてそんな本作においても、かつての彼らの代名詞的な、過剰なまでの感傷的で耽美な歌メロをエモーションたっぷりに歌うボーカルの特徴をしっかりと引き継ぎ、サウンド的には路線変更になった再結成前の最終作4thアルバム "以前" のダークなインダストリアルロックに回帰しつつも、ギターロックから徐々にエレクトロ要素を増していったThe Dreamingの晩年を思わせるようなハイブリッドさ。4つ打ちベースなのも相まって結構新鮮だし、逆?の3曲目の大陸的ロックバラードという直球もまた良し。新曲は3曲という顔見せ程度のボリュームだけど、両バンドのキャリアが混ざりながら模索も含め形になった印象があるので、音楽活動自体は隙間なく継続していたことになる彼(ら)にしてみれば、バンド名に関わらず結局はその時々のやりたいことが反映されてきたと見るのが筋かなと。大好きなバンドなので本格的な復活がとても嬉しいし、制作が明言されているフルアルバムがますます楽しみになりました。

 

 

 再結成以前のフルアルバム4作品についても紹介記事を書いており、この機会に文章を少し修正していますので、よろしければ合わせてご覧ください。改めて聴いたけど「Darkest Days」は本当に神盤だな…!