MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Stabbing Westward "Dead And Gone"

Dead and Gone

Dead and Gone

  • Drugstore Records
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 アメリカ/イリノイ出身のオルタナティブメタル/インダストリアルロックバンドのEP(2020年)。

 

 2002年に解散した彼らがバンド生誕30周年にあたる2016年に再結成し、新作音源としては2001年の4thアルバム以来なんと約19年ぶりとなる本EPが2020年にリリース。再結成については以前から噂やちょっとした動きなど小さな伏線がいくつか示され、いざ再結成されても(ボーカリスト・Christopher Hallらが2003年に開始したバンド・The Dreamingの活動もあったせいか)単発の活動が多く、少しずつ歩を進めていたようで、いかにも助走の長い彼ららしい。そしてそんな本作においても、かつての彼らの代名詞的な、過剰なまでの感傷的で耽美な歌メロをエモーションたっぷりに歌うボーカルの特徴をしっかりと引き継ぎ、サウンド的には路線変更になった再結成前の最終作4thアルバム "以前" のダークなインダストリアルロックに回帰しつつも、ギターロックから徐々にエレクトロ要素を増していったThe Dreamingの晩年を思わせるようなハイブリッドさ。4つ打ちベースなのも相まって結構新鮮だし、逆?の3曲目の大陸的ロックバラードという直球もまた良し。新曲は3曲という顔見せ程度のボリュームだけど、両バンドのキャリアが混ざりながら模索も含め形になった印象があるので、音楽活動自体は隙間なく継続していたことになる彼(ら)にしてみれば、バンド名に関わらず結局はその時々のやりたいことが反映されてきたと見るのが筋かなと。大好きなバンドなので本格的な復活がとても嬉しいし、制作が明言されているフルアルバムがますます楽しみになりました。

 

 

 再結成以前のフルアルバム4作品についても紹介記事を書いており、この機会に文章を少し修正していますので、よろしければ合わせてご覧ください。改めて聴いたけど「Darkest Days」は本当に神盤だな…!

 

Ray "Happy days"

 アニソンシンガーの編集盤(2017年)。

 

 初のベスト盤にしてラストアルバム。デビュー5周年を目前にして "歌手活動卒業" を表明し、本作と翌月のファイナルライブで約5年半に渡る活動に幕を下ろしました。振り返ると辛さも悩みもあったけど幸せな時間だったという総括を込めてこのタイトルにしたとか。泣けますね。内容はアルバム初収録含む全シングル曲(全てタイアップつき)+それ以外の代表的なタイアップ曲+新曲2曲で、無難っちゃ無難だけど彼女の華々しい活動の記録として相応しい選出で、これ1枚でも十分に彼女の雰囲気や一通りの代表曲を体験できます。新曲はいずれもI've制作陣による集大成的な楽曲で涙なくして聴けません。しかし初回特典のDisc-2もできれば合わせて聴きたい。Disc-1に入りきらなかったタイアップ曲(Ray名義のCD初収録曲含む)や人気曲で構成され、特に後者はアルバムを象徴する曲やシリアスバラード、電波曲、トランス、珍しくロッキンな曲から唯一彼女が単独作詞した楽曲など、タイアップ曲の羅列だけでは味わえないアーティスト・Rayとしてのレンジの拡げ方や歩みをたっぷり詰め合わせた、Disc-1に勝るとも劣らない内容になっています。まぁ個人的にはなんで「向日葵」が入ってないんだよォォォ!!!!と叫びたくなるんですがそれはともかくとして(早口)、アイドルポップ/ガールポップがとことんまで似合う歌声や佇まいと、それをI'veが全面的にパックアップした鳴り物入りのデビューはやっぱり衝撃的で、だけどそこに留まらずに挑戦を続けながらも芯の部分はいつまでも変わらない彼女の存在はとても魅力的だったし、そんな短いながらも濃密に駆け抜けた期間をまとめ形にした作品として、アニソンやI'veのリスナーには大のお勧めです。

 

Becko "Inner Self"

 イタリア出身のMarco "Becko" Calancaによるトラップメタル/エレクトロニックロックプロジェクトの1stアルバム(2020年)。

 

 ポストハードコアバンド・Hopes Die Lastのベース/キーボード/ボーカルとして約11年間活動し、2015年に脱退したMarco "Becko" Calancaが、その後に立ち上げた自身の名を冠したソロプロジェクト。幾つかのレーベルを渡り歩いた後、2020年初頭に我らがKlayton率いるFiXT Music入りを果たし、その流れでたまたま彼を知りました。で、これがまたえらく格好いい!個人的には詳しくはないのだけど、トラップメタルっていうジャンルなのかな。無表情な重低音が特徴的なトラップビートの上にメタリックなギターや電子音を加えたサウンド。彼の場合、そこにポストハードコアのエモーションや(FiXT的な)インダストリアルロック/EDMの影響なども加え、エッジと華やかさを兼ねた独自性を獲得。分かりやすいところではBring Me The HorizonやLinkin Parkをカバーしていたりもして、実に絵になる仕上がり。もう1つ特徴的な点として、彼は日本が好きなのか「ベコー」と日本語での表記を割と強調していたり、日本人ラッパーとのコラボも行っています。一方で日本のアニメも好きなのか、ファッション・ジャケット・MV等でアニメを頻繁に使用しているし、更にはシリアスでハードな楽曲の中に時折女性のアニメ声を掛け声のようにサンプリングしていたり(!)。そんなあれこれが全部ブチ込まれた、ある意味カオスな世界観。だけどそれらをきっちりまとめ上げてスタイリッシュに聴かせるのは、彼のキャリアやセンスが成せる業なのかなと。個人的にも親近感が湧くし色々と「どストライク」でした。管理人が2020年に聴いたアルバムの中で最も印象に残ったのものの1つです。

 

葉月 "葬艶-FUNERAL-"

 lynch.のボーカリストによるソロアルバム(2020年)。

 

 もともとはバンド本隊のライブの中の "ピアノ1本で歌う" という1コーナーから派生し、やがて彼の単独公演として確立していった「奏艶」と題された活動があり、その集大成としてリリースされた作品。なのでファンにとっても「ついにソロデビュー!」というよりは、ぬるっと始まっていて気がついたら浸透したもの、みたいな感じ(かな?)。内容も過去の「奏艶」に基づいており、公演で披露したlynch.のセルフカバー・他アーティストのカバー・オリジナル曲という3要素での構成で、ピアノ/ストリングスを主体としたクラシカルな編成で統一。カバーの選曲は、自らのルーツである黒夢LUNA SEABUCK-TICK、昵懇のPay money To my Pain、実は楽曲制作にも影響を受けたというCocco柴咲コウといった、彼の嗜好や背景をストレートに反映した、同世代あたりには特に親しみやすいセレクト。荘厳さや流麗さだけでなく、重厚さや迫力が浮き立つような曲や、尺八や胡弓などの和楽器を取り入れた曲などを、彼の "艶" めいたボーカルによって見事に表現しています。「至上のゆりかご」の超ローボイスや「水鏡」の節回しも見所だし、セルフカバーの「PHOENIX」やPTPの「Another day comes」におけるシャウトを伴う歌唱は、原曲のラウドなサウンドとは方向を異にした音を背負いながらも、そこに引けを取らない激しさと熱量が込められ、ただのバラードアレンジなどに終わらない、まさに彼/本作ならではの仕上がり。活動歴20周年を迎え深みを増していく「葉月」の狙う世界観が見事に体をなし、魅入られた人の心をブチ抜く逸品。至高の闇属性オーケストラ!

 

 

 以上、当ブログの主なテーマとはほぼ関係ない完全趣味枠な記事でした。管理人が2020年に最も再生した(ことになるかもしれない)アルバムということでひとつ!lynch.に関する記事は他にも書いていますのでよろしければ合わせてどうぞ(めちゃ長いですが)。