MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

I've "しょーとサーキットDS"

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 アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによる電波ソング集(2015年)。

 

 コミックマーケット89にて限定販売された新・電波ソング集。一旦完結した「SHORT CIRCUIT」シリーズの系譜が約5年半ぶりにここに復活。ちなみにタイトルの「DS」とは「Delusion Side」とのこと。知ってた。歌うのは「新機軸戦士」という体のユニット・柚子乃 & RINA。MELLばりのロック曲も歌いこなす柚子乃、1年前にI'veデビューしたばかりのRINAの二人とも、あまり電波とは結びつかないようなイメージもあったけど、そりゃあ見事に歌いこなしてます。作詞・KOTOKOによる萌え萌えな合いの手が盛り盛りの「応援 is L♥VE!!」、ギタリスト・尾崎武士らしいギターロックベースの「CAT -lonely lolita-」、激甘なアイドルダンスポップ「Darlin'♥Darlin' ~ふたりのカノジョ~」、タイトル曲にハズレなしを体現し続ける高瀬一矢マジック炸裂な「しょーとサーキット DS」と作家も作風もそれぞれで、たった4曲ながらも満足(というかこれくらいが丁度いいか・笑)。かつてのKOTOKO & 詩月カオリが "姉妹のような" コンビネーションだとしたら、こちらは "双子のような" コンビネーションとでも言えそう。まぁKOTOKOの名曲群には一歩及ばないかもだけど、KOTOKOはこっち系を歌わせたらガチで日本一だと思うし、比べるだけ野暮ってモンです。それらしい電波ソングやそれに近しい楽曲は近年のI'veでは割とご無沙汰だったもので、愛好家にとってはそれだけで「チュッチュでアチチでヒャホウなミラクルキュートソング 復ッ活ッッ」と思わず勝鬨を上げたくなること必至!

 

VNV Nation "Matter + Form"

Matter + Form

Matter + Form

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 イングランド出身のフューチャーポップ/EBMユニットの5thアルバム(2005年)。

 

 ほぼ恒例となっているオープニングの小品インストからして何かちょっと雰囲気が違うなと思ったら、本当に違っていた…!?実質1曲目でありシングル曲の「Chrome」がまず、ボーカルを前面に出しフューチャーポップらしいシンセが抑えられエッジの効いた、以前までの彼らと比べると明らかに異質な領域ながらも格好いいサウンドにいきなり魅せられました。続く「Arena」は耳馴染みのある爽快なシンセサウンドが全体を牽引する一方で、リズムは明らかに8ビートでロックなアグレッシブさが。前作にて強化したピアノ/クラシックやアンビエントな楽曲はしっかり引き継ぎつつ、ボーカルなしのストイックな前傾エレクトロダンスの二連作や、ハードタッチなインダストリアルダンスの「Entropy」を筆頭に、四つ打ちダンス系の楽曲もそれまでにない攻めのアプローチが目立つなど、脱フューチャーポップと言える動きが一層進められた作品と受け取ることができます。前作においても、一つ打ち立てた前々作「Empires」から脱却するような傾向があったけど、今回は前作含めそれまでの音楽資産を総動員し、それまでの何一つも否定することなく新たな境地へ進むことに成功しているんじゃないかと。曲ごとの特性の強化という方針は前作同様と言えるけど、しっかり整地され全体の足並みが揃っているので、散漫に感じることなく一気に聴けてしまいます。初めて外部プロデューサーを迎えたのも功を奏したのかも。自分たちが開拓し名づけたフューチャーポップという枠組みに甘んじることなく、 傑作を更新し続ける彼らの底力を見せつけた一枚。

 

 

 彼らのこれ以前の作品について書いた記事が結構古かったので、今回を機に内容を見直して少しだけ改稿しています。よろしければ合わせてどうぞ。

 

ACID ANDROID / GARDEN

GARDEN(初回限定盤)

GARDEN(初回限定盤)

  • アーティスト:ACID ANDROID
  • 発売日: 2018/04/04
  • メディア: CD
 

 L'Arc~en~Cielのドラマー・yukihiroによるソロプロジェクトの4thアルバム。

 

 フルアルバムとしては何と7年4カ月ぶり、新作としてもEP「code」以来ほぼ7年ぶりという久々にもほどがあるアルバム。その間の主催ライブイベントを中心とした活動の傍ら、少しずつ制作されていた模様。ちなみに2017年よりアーティスト名が大文字表記に変更され、11月に配信でリリース。翌年4月には全体を再ミックスしたCDが(初回盤はCD化された配信版との2枚組で)リリースされています。随分後に軽く聴き比べた感じだと新ミックスの方が心もち広がりを感じるかな。いずれにせよ、音楽的には前作までのインダストリアルロックは「一旦やり切った」とのことで(ええー?)、今回はもう1つの大きな影響元であろうDepeche Mode風のニューウェイブ/エレクトロポップを強く意識した内容に。リズムトラックやギターのカッティングはあくまでも軽やかで、音を重ね過ぎず、シンプルなシンセのフレーズを最大限に生かしながらもゆったりどっしりと構えた曲構成。前作の時点でエレクトロニックの比重は上がりつつあったけど、重ねまくったギターリフの攻撃性を無くし、より内省的なサウンドにすべくアプローチを変化させたような感じ。なので見せ方やアウトプットがちょっと違うだけで、根本にあるものは良くも悪くも変わらないというか。ただ、ここまで歌がリードしていく音楽になると、ボーカルの弱さはさすがに無視できなくなるのが勿体なく思います。それこそSOFT BALLETDepeche Modeみたいな力強い低音ボーカルが似合いそうなだけに。

 

I've "The Time ~12 Colors~"

 アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによるGIRLS COMPILATIONシリーズの企画盤(2016年)。

 

 I'veの15周年を祝う2015年のライブに出演した、新旧織り交ぜた12名の歌手による記念盤。コミックマーケット89にて先行発売され、後に一般販売されました。現役の所属/ゲスト歌手だけではなく、KOTOKOを始めとした元所属歌手までもが一同に会し、1人1曲の書き下ろしの新曲を歌うという何とも豪華な企画で、従来のGIRLS COMPILATIONとは異なる立ち位置にあるせいか、ナンバリングには数えない独立した作品となっています。歌手の面子としてはI'veの歴史そのものであり、作家が放つ楽曲は2015年なりのI'veの最先端という掛け算によって生み出される、各歌手の特性や持ち味を引き出すトランス/EDM等を起点としたダンスポップ/ロックが目白押し。KOTOKO高瀬一矢コンビの過去の名曲群にも引けを取らない王道ナンバーから、井内舞子が手掛けたキュート系ガールポップ島みやえい子C.G mixの一歩間違えば演歌になりそうな哀愁歌謡まで幅広く、まさに盤石。片や、尾崎武士が書いたアシッド&アグレッシブな2楽曲の一際強い存在感だったり、今回作編曲デビューしたNAMI、記念ライブでは本人の既存の作風とはかけ離れたMELLRed fraction」をカバーして観客の度肝を抜いた歌手・IKUの切々とした歌からは、これから先の期待感も感じたり。MELLMAKOが不参加なのは仕方なくも残念ではあるけど、記念盤に相応しい、往年のファンには必携の一枚。この後はいよいよ川田まみも引退することになるし、もうこんなアルバムは二度と作られないでしょう。 

 

lynch. ライブハウス支援企画CD 「OVERCOME THE VIRUS」

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 出典:lynch. official web site https://pc.lynch.jp/

 

 管理人がひっそり宇宙一好きなロックバンド・lynch.が、コロナ禍の影響により存続が危ぶまれる全国のライブハウスに向けた支援企画を去る3月30日に発表しました。その内容は、今回このために新曲を書き下ろし、販売・配信で得られた利益の全額を、lynch.が過去に出演した全国148カ所のライブハウスに分配・寄付するというもの。彼らが大好きな管理人としては、もちろん新曲が聴きたいというのもあるけど、その姿勢や行動力に感銘を受け、ライブハウスという場所や文化を微力ながら応援する意味も込めてこの企画に参加しました。という訳で、購入したCDの感想や、今回これに乗じてlynch.というバンドを知らない人へのお勧め作品なども軽く書いてみようと思います。

 

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