MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

DIE IN CRIES / VISAGE

VISAGE

VISAGE

  • アーティスト:DIE IN CRIES
  • 発売日: 1992/03/11
  • メディア: CD
 

 4人組ヴィジュアル系ロックバンドの2ndアルバム。

 

 前作が実質的にボーカリスト・KYOのソロ作品だったのに対し、今作から(前作の時点で参加していた)OPTIC NERVEの2人(室姫深、YUKIHIRO)が正式に合流。ベーシストにはTHE ACEというバンドで実績があったTAKASHIを迎え、4人組バンドとして新たなスタートを切った作品。メジャー1作目でもあります。全員がこの時点で一定のキャリアがありまさにスタープレイヤーが集まったバンドと言えるのだけど、やはりと言うべきか、それぞれの前身バンドに捉われることなく、超えるべく、新たな世界観を模索しているような印象を受けます。というかそれも結果論なのかも知れないけど。と言うのも、正確無比で無感情なドラム、5弦フレットレスという特殊さをもって常時ウネりまくってるベース、ギターシンセを積極的に用いて彩りを添えていくギター、そして一音一音に気迫を込めるように熱く歌うボーカル──それらがひと塊のバンドに、というよりも、4人それぞれの個性が危ういバランスながらも奇跡的に共存して成立している、みたいな感じなんですね。それでいて楽曲も、ド直球に心を打つビートロックを基調としながらもニューウェイブ、耽美系バラード、人力インダストリアルなど盛り沢山で、曲にもサウンドにも見るべき部分や刺さるポイントが多く、当時としても恐らくは初期LUNA SEAばりに "ジャンル分け不可能" だったのではと思わせるほど。そしてその特色は、バンドが続くにつれて失われていったものでもあるようで、それがこの作品をより孤高たらしめているとも言えます。後追いで聴いた分隔世の感はあったけど、刹那的な名作としても、日本のインダストリアルロックの文脈の一つとしても、体験できて心底良かったと思えた一枚です。 

  

川田まみ "PARABLEPSIA"

PARABLEPSIA(初回限定盤)

PARABLEPSIA(初回限定盤)

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 I've専属ボーカリストの5thアルバム(2015年)。

 

 前作よりベスト盤を挟み約3年ぶり、メジャーデビュー10周年イヤーにリリース。シングル曲については、近々の「Gardens」を外したり、ベスト盤にも収録済みの2012年作「Borderland」を再収録するなど、前作以降の4曲から2曲が選出。その理由は、本作には「E.M.R (Electric. Mami Kawada. Rock)」という明確なテーマが打ち立てられ、前述の「Borderland」を起点にしつつ一貫したコンセプトを前提に集中的に制作されたため。故に読んで字の如くというか、重厚なシンセ/エレクトロと激しいエレキギターが、I'veらしいダンスビートの上でいつも以上に全編に渡ってスパークしまくった、昨今の川田まみの代名詞や核となるような近未来的ロックが満載、なのです。耳慣れないアルバムタイトルは「錯視」という意味で、精神的な思いが込められているようだけど、そこから連想される規則的/幾何学的な意匠やジャケットデザインも、本作のテーマやサウンドの印象を後押ししているかも。Celldwellerばりのエレクトロニックロック、MELLの意思を継ぐような「BLACK LAGOON」タイアップの「Red fraction」系インダストリアルロック、ハードタッチなEDM/トランスなど徹底されていながらも、比較的柔らかい印象の楽曲による緩急もありギリギリ息苦しく感じないのは、多数の作家を擁するI'veの利点が出ています。反面、バラエティ感は控えめだし、初めて彼女を聴くような人にはやや不向きかもという気がしなくもないけど、これだけ高水準だと文句のつけようがないですね。川田まみの作品としても、I've+ロックという方向性でも、一つの極みに到達した傑作盤。

 

KGC "Dirty Bomb"

Dirty Bomb

Dirty Bomb

  • kmfdm records
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KMFDMのSascha KonietzkoとLucia Cifarelli、CurveのDean Garciaによるインダストリアル/エレクトロニックプロジェクトのアルバム(2006年)。

 

 KMFDM・Curveという高い人気と評価を誇る両バンドのメインコンポーザー、そしてKMFDMの女性ボーカリストの3人を中心としたコラボレーションプロジェクトがこのKGC。各メンバーの名前の頭文字を並べただけというシンプルな名前ながらも、なかなか夢のある企画。その肝心の内容の方は、KMFDMとCurveを足した感じ…というよりは、CurveをベースにKMFDM成分をふりかけた感じと言うべきか。霧の中を彷徨うような、陶酔や恍惚を誘うようなCurve型シューゲイザーを基調としつつ、楽曲によってKMFDMっぽさが濃くなったり薄くなったり。例えば歪んだギターの存在感が強めだったり、ややリズムパターンに趣向を凝らしたり、引いては本家にはあまり無いようなグルーヴ感に繋がったり、など。ただ、どの楽曲もテンポ感が似通っていて、高揚感としては今ひとつ。Lucia Cifarelliのボーカルもどことなく遠慮がちに聴こえるし。もちろん決して出来は悪くはなく、というかむしろ細かいところまで凝っていてじっくり聴き込むのも一興だけど、一聴してすぐにピンとくるタイプの作品ではないし、豪華コラボ的な先入観で見ると物足りなさの方が勝ってしまう。とろ火すぎるというか、もうちょい突き抜けて欲しかった。とはいえ、KMFDMとCurve、近いようでいてそうでもなさそうなだけに、混ざったらこうなりますよ的な面白さもあるので、いずれかまたは両バンド、同ジャンルなどが好きであれば十分に楽しめるかと。

 

幻覚アレルギー / PSYCHE:DELIC

PSYCHE:DELIC"

PSYCHE:DELIC

 

 2人組ヴィジュアル系ロックバンドの1stアルバム。

 

 インディーズチャート1位を飾った前ミニアルバムより約2年ぶり、メジャーデビュー作となった1stフルアルバム。初回盤は多数のダッチワイフが浮かび上がる不気味なBOX仕様。商業的にこれからという場面だろうに、この尖り方ひいては売る気の無さは凄い。まぁそれを言ったらバンド名の時点でそうですけども。で、そんな初志貫徹っぷりは音楽面でも相変わらず、というかむしろ加速。前身バンド・かまいたちから激しさだけを抽出し狂気をブレンドしたようなパンキッシュなサウンドが、メタリックな鋭さやハードコアな獰猛さまでも獲得し一点突破。音の迫力も大いに向上しているし、ノイズを散りばめた病的さ、やかましさの演出も際立ちます。そんなサウンドに、薬物の幻覚作用を連想させるような歌詞を本能的に歌うSCEANAのボーカルが乗るだけあって、もうほんとバンド名の面目躍如、説得力も抜群ですわな。バンドのテーマソング的な「SPEEDアレルギー」のリテイクで本作は幕を閉じるけど、前作のものと比較すると違いが一目瞭然!更に「ロマンティスト」等一部の楽曲はもはやインダストリアルの領域だし、かと思いきや、字余り気味の歌と綺麗なコード進行でダイナミックに切ないストーリーを展開していく「ラプソディ」もあったりと、意外な振り幅にも魅せられます。1994年と言うと、ヴィジュアル系ブーム前夜といった時期かなと思うけど、その先駆者的な精神性、また古き良き日本製パンクからの影響、そしてインダストリアル(ロック)にもカテゴライズされる激しさとアングラ感が重なるという意味で、個人的にはとても魅力を感じるものがあります。

 

 

 ↓ついでに前作の紹介記事(11年前…!)も少し加筆修正したので、よろしければ合わせてご覧ください。

インダストリアル音楽同人誌委託のお知らせ

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 ※エイプリルフールネタです

 次の夏コミ(C98)にて、インダストリアル音楽に関する同人誌を、再び有志の方々と共同で出す予定でしたが、中止を受けて通販の委託販売をすることになりました。

 

 この本は、「いんなーとりっぷブログ」の鉄屑さんの呼びかけにより集まった総勢23名の(広義の)インダストリアル音楽に造詣の深いブロガー/ツイッタラーさん達が、それぞれ得意とする分野について執筆した原稿を持ち寄って、それを一冊にまとめたオムニバス本の第4弾になります。

 

 詳しい内容は↓をクリックしてご覧いただけます。

 

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