MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Strapping Young Lad / The New Black

 カナダ出身のマルチミュージシャン/プロデューサー・Devin Townsendを中心としたエクストリームメタルバンドの5thアルバム(2006年)。

 

 タイトルに反して(?)ジャケットの白背景が彼らにしては珍しく鮮烈で、再生するといきなり高速三拍子のヘヴィメタルナンバー「Decimator」で幕を開けるなど、演出少なめですぐにスッと楽曲に入り込める上に、前作のような込み入りまくった曲展開もなく重苦しさのない聴き心地。Devin Townsendソロに近いアプローチをより深く取り入れながら、今作に関しては具体的な過去楽曲のアイデアやフレーズの引用などにも積極的で、全体的にはソロっぽさと初期っぽさが上手い具合に混ざりつつも、SYLのアイデンティティを崩さずにまとめ上げているという、バランス感覚の優れた逸品に仕上がっているかと。それも、異なる要素がめまぐるしく表出するような形ではなく、各々の要素がきっちり融合しながらも楽曲1曲1曲がコンパクトにまとまっておりしっかり聴きやすい。1999年のライブ盤で既に音源化されていた名曲「Far Beyond Metal」を始め、メロディアスな歌が活躍する場面も多いです。過去の名作たちをゆうに超えるような衝撃があるわけではないにしても、そこに肩を並べ新たな指標や基盤を感じさせる充実作とも言えるのだけど、実のところ当時のDevin Townsendはあまりにも濃密だった長年の音楽活動に疲れ、また人気上昇中だったにも関わらずSYLというバンドを継続する気もなかったらしく、今作制作前にバンドの解散は決まっていたとのことで、実際に最終作となってしまいました。