MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

serial experiments lain

 

 

ワイアード」と呼ばれる仮想現実と「リアルワールド」と称される現実が並行する世界で、とある事件をきっかけに主人公の女の子・岩倉玲音に様々な不可解・謎めいた出来事が巻き起こって連鎖していき、いつしかその境界線という前提すら壊れていく、そんな物語…という解釈でいいのかな。というのもこの作品はものすごく難解なことで有名。専門用語が当り前のように飛び交う会話、伏線の積み重ねのようなシナリオ、そしてストーリーを客観的に収束・解明する存在がなく、 基本的に「なぜ?」という主人公目線で観念的な表現も含めて話が進んでいくので、視聴者も主人公と同じレベルで置いてけぼりを食らうこと必至。当時はストーリーだけでなく制作方法も含めかなり実験的なアニメ(も含めたメディアミックス作品)だったようです。

 小中学生が携帯端末を持つことも珍しくなく、SNSやブログが発達/普及し、それだけに問題も尽きない今現在のネット社会を予見していたかのような鋭さもあるし、それでいて単なるネット社会への警鐘のような安易なものではなく、あくまでも「意識」「記憶」「人格」「存在」などといった独特のテーマや表現を貫いたからこそ、多くの熱狂的なファンを生みあらゆる考察がなされ、現在に至るまで根強い人気と高い評価を保っているのかも。かなりコアではあるけど、これほど「早すぎた名作」という言葉が似合う作品もないでしょう。放映当時はインターネットそのものすらもまだまだ普及段階だった時代なので。

 管理人は、放送当時はもちろんそれ以降も何度か観ているんですが、その度に新たに解釈をし直したり逆に謎が増えたりという感じです。そのせいでしばらく間を置きつつ何度も繰り返し観てしまうのかも。作品自体を知ったきっかけは、何かでオープニングの映像を見かけたからなのですが、まさにこの作品の不思議な世界と魅力が凝縮されていて、その上Boa(UKのバンド)によるテーマソングが名曲で素晴らしい親和性に一発で心を奪われました。

 これだけで成り立つようなセンスの塊のような映像。

 オカルトじみていたりホラーっぽくもあり、難解かつあまりにも独特なアニメですが、今から初めて観ても楽しめると思います。ちなみに近々Blu-ray BOXのリリースも決定したようです。

 

 続いてサウンドトラックを2枚ご紹介。

serial experiments lain sound track

serial experiments lain sound track

serial experiments lain sound track

 

 原作がなんだか難解で電脳的なアニメなのに、本作に収録されている音楽はそういった方向とは違い、割とわかりやすいというか、素直にノレたり聴けたりするものが大半を占めます。打ち込みの割合も多いけど、全体的にはギターサウンドを前面に押し出し、ファンク/ブラス/ジャズなどを行き来するバンドサウンドで、途中途中で内省的なアルペジオやギターソロによるインストが挿入されるという形。RCサクセション仲井戸麗市が制作に関わっているということで、彼が歌うエンディングテーマやイメージソングも収録。味わい深いブルースロック。尺も短くツルっと聴けるし、どの曲も個性的で素直に格好いい。インストのロックアルバム感覚でも聴けます。元々が安易に媚びない先鋭的なセンスを感じさせるアニメ作品だったけど、このサントラもしっかりとその精神を内包しています。ただ、UKのロックバンドBoaのオープニングテーマ(名曲!)が収録されていないのは非常に残念。あれこそがこのアニメ作品のイメージを決定づけたという人は多いはず。

 

 

serial experiments lain sound track cyberia mix 

serial experiments lain sound track cyberia mix

serial experiments lain sound track cyberia mix

 

 こちらは作中で登場した場所「クラブ・サイベリア」をテーマにしたサントラ盤。そんなわけで、ロック寄りだったオリジナルのサントラ盤と違い、完全に打ち込みによるテクノ/トランス/ハウスなどに傾倒したダンスチューンが満載。基本はボーカル無し、あってもサンプリング程度で、あまり明るい雰囲気もなく、浮遊感のあるアンビエントな音色を乗せてミニマルに駆け抜けるトラックが多いです。何と言っても、アニメのオープニング曲であるBoaによる名曲「duvet」のエレクトロニカリミックス的な「dubet cyberia reMIX」が出色。ラストにはTVサイズの原曲も収録されているので、聴き比べるのもいいかも。インダストリアル風な高速チューン「antidepressant 044」もスリリングで、アルバム序盤の流れがとても良い。中盤はやや単調でダレかけるけど、終盤にはドラムンベースフュージョン風の曲もあったりして結構楽しめます。ただ注意したいのは、本作には輸入盤が存在し、そちらには「duvet」がどちらも収録されてないようです。