MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

PIG / A Poke In The Eye… With A Sharp Stick

Poke in the Eye

Poke in the Eye

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 イギリス出身のRaymond Wattsによるインダストリアルプロジェクトの1stアルバム(1988年)。

 

 80年代中期頃にはPsychic TVやEinstürzende Neubautenのエンジニアを務め、KMFDMのメンバーとして活動し、Foetusとのコラボレーションも行うなど、多方面で活躍していたRaymond Watts。そんな彼が1988年に発足したソロプロジェクト・PIGの記念すべき1作目で、何かと日本びいきな彼のリリース作品群において、本作も例にもれず日本盤が後年にリリースされています(ただし廃盤により入手困難)。その内容は、師とも言える偉大なるFoetusをなぞるような、前衛的かつ多彩なアプローチ。ジャズ/ファンクの要素や映画音楽っぽさなんかを見せつつも、Foetusほどのデタラメな勢いやジャンクサウンドで進むというやり方ではなく、あくまでスマートかつポップなニューウェイブやアートロックでしっかりと魅せてくれます。低い声で囁いたり笑ったりするように歌うボーカルも同様に表情豊かで、ギターをフィーチャーした聴き易い曲もあれば、童謡のカバー(?)やコラージュを駆使した実験曲もあり、なかなか一筋縄ではいかない危うさも。後の彼の得意技となるオーケストラ要素は無いけど、もうこの時点でそれ以外の部分でのPIGの音楽的指向が確立されていると言っても過言ではなく、決して物足りなさを感じない充実具合とデビュー作とは思えない驚くべき完成度を誇ります。1988年作品でこれだと、かなり時代を先取りし後のシーンへも影響を与えた存在だったのではないかと。