MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

D'espairsRay / MONSTERS

MONSTERS

MONSTERS

 

 4人組ヴィジュアル系ロックバンドの4thアルバム。

 

 メジャー作としては2作目であり、彼らの最終作。ここまでアルバムリリースごとにより聴きやすくなっていった流れはあったけど、さすがにそれは前作がピークになり、本作は若干ではあるものの以前のハード/ダークさを取り戻そうとする楽曲も一部見られます。ただそれもアルバムを特徴づけるものではなく、全体的には程よくヘヴィで程よくキャッチーなヴィジュアルロック。傾向として、過去作では初期にゴスっぽい雰囲気を醸したり、前作でキラキラ感を出すのに応用していたシンセの主張が本作ではほぼなくなり、シンプルなサウンドに回帰しながら所々でエレクトロニック要素をさりげなくかつスタイリッシュに組み込む感じに。ただ、それをグッと生かした曲はアルバム前にリリースされたシングル「LOVE IS DEAD」くらいしかなく、これはメロディアスで格好良い大胆なダンスロックっぷりが新しさも感じてかなり好きだったけど、アルバム曲でそれを上回る曲が見当たらず、全体的にはポップにもマニアックにも振り切れずに、特に山場もないままツルッと聴き終えてしまうので物足りなさが拭えない。決して悪い作品ではないけれど、1st~2ndが良すぎてどうしても霞んでしまうというのが正直なところ。彼らにはまだまだ今後を期待していたのだけど、この後ボーカリスト・HIZUMIの喉の不調で活動を休止し、結局復帰しないまま半年後に解散。とても残念だったけど、この解散がなければギタリスト・Karyuが次なるバンドとして加入し5人体制になったAngeloもなかったわけで、両バンドのファンの管理人としてはちょっと複雑な思いなのでした。 

 

Larval Stage Planning / LSP

LSP

LSP

 

 I've専属ボーカルユニットの1stアルバム。

 

 既に単独でI'veデビューしていた桐島愛里に、朝見凛と舞崎なみの2人の新人を加えた3名で結成。電波ソング集での直球バラードという謎デビューを果たした後、PCゲーム(インディーズ)→TVアニメ(メジャー)と順調にタイアップシングルをリリースし、初のアルバムが完成。歌や踊りだけでなく、自分たちのライブステージの実作業を伴う制作活動をも行うらしく、そのDIY精神がユニット名やジャケットのツナギ姿に表れているとのこと。狙いがよく分からん。内容はA面B面関係なく本作以前に発表したほぼ全曲を網羅した総決算的なものだけど、ユニットのコンセプト同様に色々詰め込み過ぎて渋滞している感じ。各歌手は単独名義での楽曲を聴く分には割とキャラ立ちしていたけど、本作では提示された楽曲のカラーに沿って忠実に歌うので、1曲ずつ見てもコーラスワークが多少凝っているくらいしか特徴を感じないし、誰が表に浮き出ようと歌い手像が1つに集約しているので、合う曲合わない曲がハッキリと二分。例えばクールなトランス~ハードロッキンなギターが活躍する打ち込みポップ/ロック──いわゆる「ポスト川田まみ」的な──は文句なしだけど、甘めのテクノポップ電波ソングには対応しきれてなさが伝わってきて今一つ。一言で言うと「燃え」は良いけど「萌え」がダメ。そして全体がごちゃっとしてしまい、3人で組む意味が迷子状態。ユニットの形態や方針が実験的であっても、この時点でアルバムを形にするなら明確な強みへもっと的を絞った方が良かったと思います。とはいえ素材は決して悪くないし、I'veの次世代を担う存在として方々からの期待もあったのだけど、発売後しばらくで朝見凛・舞崎なみがI'veを卒業し桐島愛里のソロユニット化。そしてシングル1枚で長らく沈黙を続け、つい先日(2019年7月)I'veとの契約が終了。3人時代はおろかユニットでも最初で最後のアルバムになってしまったとさ。 

 

Front Line Assembly / Implode

Implode

Implode

 

 カナダ出身のインダストリアル/EBMユニットの10thアルバム。

 

 「このジャケットに描かれている人間がそれまでのFront Line Assemblyを、抱えている奇妙な生物が前作の新路線を表していて、その2つが融合している異様な光景が、まさにこのアルバムの音楽性を示しているんだよ!」 Ω ΩΩ< な、なんだってー!!……と言ったのは誰だったか(たぶんジャイ宣(以下略)TCRさん)。ああ、じゃあ前作のキモイ微生物みたいなジャケも伏線だったのか…と、茶番はこれくらいにして(今の若い人には通じなさそうなMMRネタ)。本作は主要メンバーのRhys Fulberが抜け、元サポートのChris Petersonが加入した新体制(当時)での2作目。上述した通り、前作のサンプリングを駆使したテクノ路線を下地に、大部分でストリングスをフィーチャーしたりギターをアクセントに使用したりと、過去の手法も取り入れながら発展を目指したような形。実際、彼ららしいテクノロジカルかつ立体的なアレンジが目立つ最初の数曲は、傑作の8th「Hard Wired」をどこか彷彿とさせとても良かった。しかし4曲目の長大曲「Synthetic Forms」を境に徐々に不穏かつ大仰になり、以降はシンフォニック/エレクトロインダストリアル風のやや不気味な音像に集約。オペラコーラスを流したり繊細なブレイクビーツを部分的に走らせたりと技巧には凝りまくっているけど、基本的にはスローテンポだしボーカルも存在抑えめだしで、常に弱火をかけているような盛り上がりの無さがどうしても地味に感じてしまう。個人的には良くも悪くもBGM感覚で流すのが丁度いいです。

 

girugamesh / gravitation

 4人組ロックバンドのミニアルバム(2014年)。

 

 ベスト盤「LIVE BEST」でバンドのディケイドを走り終えた彼らの再スタートを告げるミニアルバム。1つ前の傑作盤「MONSTER」の手応えや、近年のラウドロック勢との対バン等の収穫を足掛かりに、より "激しさ" "重さ" に焦点を合わせて一点突破。二部構成だった「MONSTER」の前半部分──音楽的にも精神的にも吹っ切れ、攻撃性に特化していた部分を更に突き詰めたバンド史上最重量級のサウンドインパクト大で、ヘヴィなリフが繰り出される中に道玄坂下り隊による女性コーラスとシンフォニックなシンセが谺する1曲目「Go ahead」からその印象は強烈。そんな形でメタルコアやポストハードコア(そしてインダストリアルメタル)の影響を昇華しながらも、これまで同様に愚直な日本語詞やJ-Pop的なメロディを大事にするという彼ららしいスタンスを貫き、比率や迫力を増したシャウトに埋もれることなく強みとして一層際立ち、総体としてはあくまでポップ。それが最も顕著なのがリード曲の「gravitation」で、彼らが一段上のステージへ上がったようなスケールアップを感じさせる、新たな代表曲に相応しい一曲。聴かせる曲を下手に混ぜず、攻めの手を緩めない曲だけをミニアルバムならではのサイズ感で一気に聴かせる部分も、本作の位置づけや彼らの決意が表れているよう。もはやヴィジュアル系なんて出自はどこ吹く風で、むしろCrossfaithやSiMなどが好きな人にこそ受けが良さそう。個人的にも「MONSTER」に続くバンドの進化が大いに感じられ、とてもとても好きな作品です。

 

Ray / RAYVE

RAYVE (初回限定盤)

RAYVE (初回限定盤)

 

 アニメソング系ボーカリストの1stアルバム。

 

 デビュー曲「sign」がとても好きだった。「Kanon」の主題歌や「鳥の詩」などの名曲を生み出した伝説のタッグ「作曲:折戸伸治 × 編曲:高瀬一矢」が数年振りに手掛けて話題になったし、タイアップ作品に重なる真夏の季節感や清涼感に溢れた情景を見事に描写した紛れもない名曲だったのである。続く2ndシングル「楽園PROJECT」ではド頭からサビの2段目で始まる曲構成がウルトラCだし、3rdシングル「Recall」では攻撃的なリフの裏で金属音がガキンガキンと大胆に鳴らされる(風)アレンジにひっくり返った。そして注目していたこの1stアルバム「RAYVE」。これは彼女のワンマンライブの名前なのだけど、本作に限って言えば「Ray + I've」なのは明白で、ここまでのシングル同様にI'veの作家陣が全面的にプロデュース。またKOTOKO川田まみ黒崎真音も詞を提供するなど、I've非所属ながらも完全にI'veが全力で力添えする形で制作。シングル曲に加えクールなダンスチューンや直球バラードあり、唱歌のような清純ソング「向日葵」(サビ3回とも歌い回しが異なるこだわりが最高!)、また電波ソングの「baby♥macaron」やラスサビ前に劇中台詞を発する「Sweet Days」など、アニソンとしてもI'veとしても見せ場の多い幕の内弁当的な構成で、散漫にならず器用に歌いこなすのもあってド安定の仕上がり。"夢見る乙女"的な甘い詞世界はかなりアイドル寄りでもあるけど、そこを正面から楽しめる人やI'veファンにとってはまず期待を裏切らない出来でニッコリ。流石に川田まみMELLのように「ロック好きにもお勧め」などとは口が裂けても言いません。でも個人的には、当時I'veへの興味が薄れかけていたのを一気に引き戻してくれた作品であり、2013年ベストアルバムに数えたいくらいお気に入りの一枚になったのでした。割とマジで。