MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

I've / LEVEL OCTAVE

I've Girls Compilation vol.8 「LEVEL OCTAVE」

I've Girls Compilation vol.8 「LEVEL OCTAVE」

 

 北海道に拠点を置き、アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによるGIRLS COMPILATIONの第8弾。

 

 ベスト盤を挟み、I'veの主力であるKOTOKOの独立、島みやえい子の卒業後初のコンピ盤。とはいえKOTOKOは独立前・後で発表した4曲を収録しているけど、全体的な顔ぶれや比率には幾分変化が訪れ、一つの転換期を迎えています。パッと見目立つのは、電波ソング集で顔見せしていた新人3人組ユニット・Larval Stage Planning。ユニット名義の曲は普通だけど(えっ)朝見凛は王道のアプローチ、前作より参加の桐島愛里はがなり声混じりのGS歌謡風ロックでの不良性、舞崎なみはどっしりと構えたスケール感等、個人名義では各々がキャラ立ちを感じさせる仕事ぶり。そして本作の決め手に詩月カオリが3曲も担当!彼女らしいミドルバラードだけでなく、キラキラとしたデジタルダンスポップ「Hold on me ~恋の魔法~」(かわいい)や電波トランスロック「☆虹色ロックンロール♪」(かわいい)で彼女のアイドルチックな可愛らしさを違う角度から体現するなど、過去の奥ゆかしいポジションから一転、作品の顔にならんとする大活躍!カオリンフリークにとっては鼻血垂涎モノ確定であります!!すいません取り乱しました。他にもコンピ盤には約10年振りの参戦となる歌手が2人いて、Keyからのゲストボーカル・Liaは高い歌唱力を生かした雄大な4つ打ち、シャッフルカバー作でI'veへ復帰したMAKOは"ザ・I've"なマニアックなトランスと、お約束&鉄板の新旧の名曲で作品に新鮮な風を吹き込みます。KOTOKOのどの楽曲も素晴らしく、また川田まみの「INITIATIVE」も文句なしの名曲だけど、それを押しのけてしまう程に主役足り得る面々がひしめいた充実作であり、重い曲のない明るいムードも手伝い、I'veの新たなスタートとして実に相応しいと思います。 

 

Turmion Kätilöt / Pirun Nyrkki

Pirun Nyrkki

Pirun Nyrkki

 

 フィンランド出身のインダストリアルメタルバンドの2ndアルバム。

 

 国内盤は出ていないけど、この手の音楽が好きな層にはそこそこ知名度が(多分)あるバンド。インダストリアル・デス(メタル)などと形容されることもあるようで、見た目も白塗りにサタニックメイクと強烈な出で立ちではあるし、歌詞も(というかバンド名="破滅の助産師"も)恐らく過激だと思われるんですが(未確認)、音楽的にはそこまでエクストリームを追求しているわけではなく、ノリ重視で比較的取っつき易いもの。4つ打ちのダンサブルなビートとザクザクのギターリフで前のめりに突き進み、その上からシンセのフレーズが乗っかり彩りを添えるなど、攻撃性とクラブ受けも良さそうなキャッチーさを備えています。母国語のシャウトボーカルで押し通すスタイルやシンセがフィーチャーされた下世話な重低音はどこかRammsteinっぽくもあり、その辺の音楽が好きな人には相性が良さそう。というか90年代インダストリアルメタル好きにグッとくるものがあると思うんですよね。そこかしこに先人のエッセンスを感じます。時折ゴスっぽくなったり中近東ぽいフレーズが飛び出したりもするけど、基本的にはゴリ押しなので単調気味。だけど将来性も感じられる一作。ちなみに「Irstauden Ilosanoma」には同郷のインダストリアルメタルバンド・Velcraの女性ボーカリスト・Jessi Freyが参加しており、男性顔負けの強烈シャウト/コーラスとの合せ技が楽しめます。姐御!

 

DEF.MASTER / DESTROYER HAS GODMIND

Destroyer Has Godmind

Destroyer Has Godmind

 

 ROSEN KREUZの元ベーシスト・YOU-MIを中心としたインダストリアルメタルバンドの1stアルバム。

 

 結成は1989年だけど、ROSEN KREUZが1993年に解散してから本格始動し、やがて初(唯一)のフルアルバムとなる本作がリリース。当初はYOU-MIとEBU(GULT DEP/ROSEN KREUZ)の2人体制から始まり少しずつメンバーを増やしたそうだけど、本作にはDOOMの藤田タカシがギタリストで全面的に協力しているし、更に一部の楽曲にはZ.O.Aの黒木真司(琵琶)、COCOBATのTAKE-SHIT(ベース)やRYU-JI(ボーカル)など、交流のある面子も参加。ちなみに別の時期やライブ活動ではCOALTAR OF THE DEEPERSNARASAKIも加わるなど、こういった繋がりは更に広がるので、興味のある方は調べてみると色々発見があるかも。音楽性の方は非常に明快というか、性急で無機質なビートの上を歪みきったギターが暴れ回る頑強なインダストリアルメタル。苛烈な音の一部と化したボーカルや執拗に反復するリフは破壊力に長け、その全てがモーターで動いているような、というかモーターの駆動音そのもののようですらあり、激しさや重さというよりは"鋭さ"を感じます。ROSEN KREUZの後期もほぼインダストリアルメタルだったけど、あちらはポジバンの流れを汲んでいるのに対し、こちらは最初からこういう設計がなされたんだろうなと想像できるくらいにシンプルで、シンプルだからこそ強い。YOU-MIの発言やアートワークからはMinistryやFoetusらの影響が伺えるのだけど、本家に比肩し得ると言っても過言ではないクオリティは驚愕の一言。その定義や見方にもよるだろうけど、インダストリアルシーンがほとんど存在しないと言われることも多い日本において、ほぼ唯一、かつ絶対的な存在感を示す彼らが放つ、孤高の名盤。

 

川田まみ / SQUARE THE CIRCLE

SQUARE THE CIRCLE 〈初回限定盤〉

SQUARE THE CIRCLE 〈初回限定盤〉

 

 I've専属ボーカリストの4thアルバム。

 

 タイトルは「円の正方形化」ひいては「不可能を企てる」を意味するとのことで、その強気な姿勢を裏づける内容となっています。中でも先行シングル曲の1つ「No buts!」は特筆すべきものがあり、目くるめく展開と趣向を凝らした重厚さが破壊力抜群のエレクトロ × ロックチューンで、彼女とは蜜月関係にあるアニメ作品「とある魔術の禁書目録」における「魔術と科学が交差する混沌」を完璧に表現。これぞ90年代から"タイアップ作品との調和"を綿々と追求してきたI'veの真骨頂。アルバム曲にしても全く引けを取らないラインナップが揃い、エレクトロハウス風「Don't stop me now!」、文字通りハンドクラップを想起させる夏っぽいロック「Clap! Clap! Clap!」など新鮮なアプローチが目立つ一方で、彼女の柔らかい声質を生かす開放的な歌モノも抜かりなく、またそれで一旦落として最後に再び加速していく流れも秀逸。過去作の踏襲に終わらない果敢なチャレンジと、そこに追随する楽曲の尖り方・ポップさを両立させる完成度は傑作だった前作をも上回るレベルだし、それをアニソンシーンの最前線に送り込んだという点でも非常に意義深いもの。当時の彼女の対外的な活動を通した意識の変化や成長が制作に反映した結果だと思うし、KOTOKO島みやえい子が卒業し、自らがI'veの看板を背負うぞという自負も少なからずあったことでしょう。以前当ブログで2010年前後のI’ve3作品を三種の神器と表現したけど、本作はその先へ到達した稀有な一枚じゃないかと。文句なしの最高傑作だし、海外のエレクトロニックロックが好きな人にもリーチし得ると思っています。

 

Angelspit / Black Kingdom Red Kingdom

Black Kingdom Red Kingdom [Explicit]

Black Kingdom Red Kingdom [Explicit]

 

 オーストラリア出身のエレクトロパンク/サイバーゴスバンドのリミックスアルバム(2008年)。

 

 基本的には、これと決めたバンド以外はリミックス盤などまで細かく追うことはあまりしないんだけど、この作品は参加ミュージシャンにKMFDM、Alec Empire、I:Scintilla、日本のインダストリアルバンド・BAALなど気になる面々が多かったので興味を持ちました。彼らの2ndアルバム「Blood Death Ivory」の楽曲を主体とした初のリミックス盤です。もともとが効果音山盛り・リズミック・ビッチ系エロティックとエッジの効いたサイバーゴスで、この手の音楽を深く知らない管理人にしてみると、これこそが「インダストリアルロックをリミックスしたような音楽性」みたいに感じたりもするのです(変な表現なのは承知だけど)。なので、色んなミュージシャンが各々のカラーでリミックスし、エレクトロコア、シンセポップ/ダンス、ドラムンベース、エレクトロインダストリアルなどへ接近することで、むしろより分かりやすく聴こえるという逆転のような現象もあったし、その上で彼らの持ち味──標榜するテーマからなる濃さや毒気のようなものも失われていないので、ある意味素材として優秀だなというか、多少弄られても揺るがない芯の強さみたいなものを十分に感じました。KMFDMのリミックスとか開始3秒で「KMFDMじゃん!w」と言いたくなるダンスメタルなんだけど、歌が始まるともうAngelspit以外の何物でもない。BAALも期待通りのノイジーハードコアっぷりが素晴らしかったです。