MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

I've / 「TRIBAL LINK-L」「TRIBAL LINK-R」

TRIBAL LINK?L

TRIBAL LINK-L

 
TRIBAL LINK?R

TRIBAL LINK-R

 

 北海道に拠点を置き、アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによる企画盤。

 

 I'veの楽曲をI've内外のボーカリストでカバーしたシャッフルアルバム。全てインディーズからの選出だけど、L・Rと題された2枚それぞれに収録された楽曲はかなり幅広く、代表的な曲、マニアックな曲、レア曲、果ては電波曲までとかなりの範囲を網羅。バランスだけで言うなら通常のガールズコンピ盤を更に凌駕した、ある意味ベスト盤並の豪華さかも。参加した外部ボーカリストは、奥井雅美橋本みゆき榊原ゆい、nao、飛蘭桃井はるこ佐藤ひろ美といったこれもまた第一線で活躍する豪華な面々。と言いつつ、この界隈に詳しくない管理人は殆ど初めて聴く人ばかりだけど、誰もが楽曲のカラーに添って盤石に歌い上げていて、十分に惹き込まれます。中でもアングラ寄りの曲を堂々たるパワーで歌い上げる飛蘭や、電波曲を完全に自分のものにしている桃井はるこあたりは、それぞれ全く違うベクトルながらも強烈な凄みすらも感じ、原曲を聴き込んでる側からみても相当なインパクトがありました。I've内でも、当時活動を一時休止していたMELLを除く全員が持ち歌をシャッフルカバーしており、例えばKOTOKOのデビュー曲「Close to me…」を島みやえい子が歌う等、ファンには興味深い取り合わせがなかなかに新鮮。しかし何よりも驚きだったのが、I've最初期以来約6年半ぶりとなったMAKOの復帰。そのハスキーで芯の強いボーカルを、既に耳馴染みのある曲のカバーという形で再び耳にすると、やはり少なくともI've内では一味違う存在感の稀有な歌声だと強く実感します。収録曲はキーを変更するなどしている曲も一部あるけど、基本的にはリアレンジ等は無し。しかし企画盤としてのバリューは十分。参加歌手や選曲コンセプト等に特に違いが無いのに2枚に分けてのリリースなのは若干謎だけど(これこそ2枚組で良かったのでは)、本作を元にしたライブも行われた通り、枠組みを超えたお祭り感覚で楽しめる作品。

 

 

lynch. TOUR’18 「Xlll -THE BEAUTIFUL NIGHTMARES-」

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出典:lynch. official web site http://pc.lynch.jp/

 

 誓い交わした あの場所へ──

 

 はい、というわけで。あとは11/4のTOKYO DOME CITY HALLでのファイナルを残すのみとなった、lynch.の全国ツアー「Xlll -THE BEAUTIFUL NIGHTMARES-」に参戦してまいりました。地方の田舎町で引きこもりがちな生活を送っている人間のライブ参戦記再び。

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Geezer / Black Science

Black Science

Black Science

  • アーティスト:Geezer
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 Black Sabbathのベーシスト・Geezer Butlerを中心としたヘヴィメタル/インダストリアルメタルバンドの2ndアルバム(1997年)。

 

 1stアルバムの名義「g//z/r」から打って変わって本作では「Geezer」名義でのリリース。ジャケットの不気味な手はBlack Sabbathの楽曲「Hand Of Doom」からきているようです。約2年のスパンを経てリリースされた本作では、ボーカリストが交代。本隊に専念するということでFear FactoryのBurton C. Bellが離脱し、代わりにClark Brownという新人?らしき人物を起用しています。聴いた感じだと無名とは思えない巧さというか、激しいサウンドに全く引けを取らない安定感と熱さが感じられ相性は良好。グルーヴメタルに詳しくはないので自分の好きな範囲で強引に例えると、Die KruppsのJürgen Englerにも通じるものが。もうちょっとその言で続けると、今作は全体的なサウンドメイクも変化がみられ、厚みがいくらか減った分より不気味な存在感を放つベースラインや、端々でアクセントになるメタリックな打ち込み/ドラムの音色などがフィーチャーされるなど、Die Kruppsが好きならばまず外さないインダストリアルメタル寄りになっていると言えます。とは言っても凄く似ているだとか、例えば当時ありがちだったNine Inch NailsやMinistryを手本にしたんだろうなーというのが透けて見えるようなタイプでもなく、元々備わっている重苦しい雰囲気を生かしながら程よく底上げしているのがとても良い感触。Geezer Butlerやヘヴィメタルのファンにどう映るかは分からないけど、インダストリアルメタルとしてはなかなかの注目作かと。

 

101A / one day

one day

one day

 

 2人組(当時)ポストロック/シューゲイザーバンドの2ndアルバム。

 

 バンドが始まってからこの作品まではボーカル/ギターとベース/プログラミングの2人体制で、本作のドラムにはセッションドラマーを複数人迎えて制作された模様。前作から2曲をリテイク収録していることも示す通り、轟音と浮遊感を行き来する冷たいポストロック/シューゲイザーサウンドは、前作の路線を継承したと言えるもの。2005年以降はヨーロッパ方面でも活動を開始したとのことで、そこに海外での活動もフィードバックし、改めてバンドの音楽を形にした作品といった趣き。激しさを押し出した楽曲はライブだといい感じにトリップしそうだなと思わせるダイナミズムが備わり、ダウナーな楽曲はブリストルサウンドに接近することで、新たな領域に踏み込んだかのよう。背景に溶け込むような儚い囁き声や、一気に感情を暴発させるような叫びを使い分けるnoahのボーカルも相まって、全体に通底するのはとことんまでディープな空気感。それは本作中では比較的流麗なメロディを聴かせる「corona」や、サックスを取り入れたインプロ風のラスト曲「neo」まで一貫したものがあり、揺るぎないバンドのスタンスを証明しています。acid androidとDEF.MASTERを兼任するメンバーも好意的なコメントを寄せていた(と思う)し、 インダストリアル系が好きな人にも響くものはあるかも。

  

Outer / Outer

Outer / Outer[DVD付]

Outer / Outer[DVD付]

 

 I'veのクリエイターとKOTOKOによるI've派生パンク/ロックバンドのミニアルバム(2011年)。

 

 コミックマーケット80で限定販売された、発表済みのOuter名義の楽曲に新曲を加え一枚にまとめた「最初で最後のミニアルバム」。当初Outerは謎に包まれた存在とされ、後にKOTOKOとI've作家陣によるバンド体制のユニットだと判明。実はKOTOKOのボーカルデビューはソロとしてよりもこちらが先だったという事実も示す通り、I'veの中でもかなり初期から存在していました。音楽的にはI'veのパブリックイメージからほど遠く、ギターを効かせたシンプルなロックや勢いあるパンク風ロックがメイン。恐らくKOTOKOの作風としてはほとんどここでしか聴けないもので、ある意味貴重。ドラムは基本打ち込みだろうけど、パンキッシュに2ビートで疾走したり、ギターをズンズン刻んだりは普段のI'veではまず見かけないバンド感全開のアプローチだし、I'veのお家芸のエレクトロニックな楽曲もマニアックかつ攻撃的なアレンジで(Sonic Youth「Dirty Boots」のインダストリアルメタル風カバーは特に顕著)、「ソロ名義ではやれない尖った曲をやるユニット」みたいな異色さが、一枚にまとまることでより際立つものになっています。ファンアイテムの域を出るものではないけど、KOTOKOのボーカルが好きなら聴く価値は多いにあるかと。