MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

I've "SHORT CIRCUIT III"

I ve SHORT CIRCUIT III

I ve SHORT CIRCUIT III

  • アーティスト:I’ve
  • I've
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 北海道に拠点を置き、アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによるコンセプトアルバム(電波ソング集)3作目(2010年)。

 

 「全てのリミッターを破壊して、みたびこのサウンドに電波(デジ)れ!!!」はい、というわけで電波ソング集の第3弾です。「べりべり すぅい~すぅい~ う~ん、ぽわんでちゅっちゅ~」「聞き分けの悪い恋人候補は (みゅ~×3 覚悟っ!)お仕置きしちゃうぞ!こっちを向いて(みゅ~×3 おしりぺんぺんっ)」と、相変わらず色々とイッちゃってますね。ド頭の萌えパラパラ「Blossomdays」から文字通り運動会とかが似合いそうな「常識! バトラー行進曲」(これ好きだ)辺りまで、押し並べて一定の奇怪っぷりだけど、どうしても前作の密度や破壊力と比べてしまうと一段落ちるし、1作目ほど無駄なメリハリもないので、良くも悪くも平坦気味。曲単位では決して悪くないけど、1枚のアルバムとしてみると期待も予想も裏切らない、みたいな。過去作でいう「Princess Bride!」「Princess Brave!」コンビや「さくらんぼキッス」みたいな突出した楽曲があれば印象はもう少し上がったと思うけど、まぁそれはそれとして。電波ソングやI'veのファンなら無条件で特攻しましょう。カオリンが輝いています!そして今回新たな顔見せとなったのがI've次世代ユニットのLarval Stage Planning。「Send-off ~涙色のスタートライン~」というド正面の感動系バラードをデビュー曲としてここで披露。高瀬さん入れるアルバム間違えてませんか?でもその場違い感が逆にカオスになっているかも。もしこれが狙い通りだとしたら、それはそれで凄い。 

 

KMFDM / Agogo

Agogo

Agogo

  • アーティスト:Kmfdm
  • Tvt
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 ドイツ出身のインダストリアルバンドの編集盤(1998年)。

 

 初のベスト盤「Retro」と同時発売。裏ベスト盤的な役割も多少はあるけど、基本的にはレア曲集という位置づけ。サンプリングの著作権侵害で廃盤→別ver.で再発という流れになった4thアルバム「Naïve」の原曲の一部や、制作過程で収録曲が急遽不本意に変更になった5thアルバム「Money」のボツ曲を収録していることからみて、その当時のゴタゴタを埋め合わせたり、「Retro」に入らなかったけど発表したい楽曲(「Rip The System」のシングルver.等)をフォローするという意図があったのかも。当時としては痒い所に手が届く有難みがあったんだろうけど、2006年に「Naïve」が再販され、2008年にはより多くの初期レア曲を網羅する「Extra」もシリーズ展開されたので、もう本作も半ば役割を終えているのかなと。しかし後半のコンピ盤参加曲や完全未発表曲はここでしか聴けないし、U2のカバー「Mysterious Ways」、彼らにしては珍しくMinistryばりにアグレッシブな「Hole In The Wall (Remix)」、PIGとのスプリット盤のデモのような「Agogo」、EBM以前の実験的な音楽のキャリアが垣間見える1985年の未発表曲「Zip」など興味深いものも多い。少しでもレア曲を開拓したいコアファンやコレクター向けの作品。

 

SUGIZO / C:LEAR

C:LEAR

C:LEAR

 

 LUNA SEAのギタリストによる2ndアルバム。

 

 LUNA SEAの終幕後、2002年より活動を開始したSUGIZO & THE SPANK YOUR JUICE(目的によりメンバーが流動的に変化するグループ)名義での集大成的な作品といったところ(でも個人的に好きだった「SUPER LOVE」は未収録)。1stソロアルバム「TRUTH?」に通ずる世界観はあるものの、ああまで実験性に重きを置いておらず、素直にSUGIZO自身がボーカルを執る歌モノが大半。しかし「NO MORE MACHINE GUNS PLAY THE GUITAR」や「傀儡」といったヘヴィロック/ミクスチャーロック、アンビエント/ポストロック的な空間的アレンジの美しさが映える楽曲、フュージョンとロックを行き来する「PERFUME」、バラードなどレンジは広く、そんな楽曲群を彩るラウド/ノイズ/アコースティックなど豊かな表情を見せる独特のギターワークも相変わらず素晴らしい。SUGIZOのボーカルも、反戦や生きることを鼓舞するような悲痛なメッセージを乗せ、後のアルバム「ONENESS M」(2017年)にて清春が歌った「VOICE」を筆頭に洗練されたメロディを聴かせます。それこそ一部の楽曲からはLUNA SEAの楽曲に近い感触すらも得られるし、そういう意味でも、彼の音楽的素養の広さと、より自然体のスタンスが融合した親しみやすさも併せ持つ作品と言えます。しかしこうなって来ると、SUGIZOの声質/歌唱力をどう見るかという点が本作の評価において大きな分かれ目にも。個人的には音楽性にも合ってると思うし結構好きなんだけど、合わない人はとことんダメかも。

  

IKU / ユアウエア

ユアウエア (初回限定盤)

ユアウエア (初回限定盤)

 

  女性シンガーソングライターの1stアルバム。

 

 I'veの高瀬一矢から楽曲提供/プロデュースを受け、ジェネオンからデビューしているものの、この時点では特にI've所属というわけではなかった彼女(2014年よりI'veに正式に参加)。本作のプロデュースも高瀬一矢だけど、いわゆるI'veのようなサウンドでは全くないし、シングル曲には結構大きいアニメタイアップもついているけど、快楽的なアニソンにつきものの派手さや尖り方の一切ない、あくまでもシンセやピアノやストリングスを中心にしたシンプルなポップス。彼女を見出した島みやえい子をして「声質に頼らない歌の上手さを持っている」と言わしめるだけあって、これといった下積み経歴のない新人とは思えない歌声の安定感も上々。非常に良くできたプロダクトだと思います。個人的にも結構好き。しかし、それは裏返したら刺激が少ないということでもあって、作詞作曲には自身以外にも10名を超える作家が参加している割には、ちょっと優しく穏やかな方向に統一され過ぎてないかなと。彼女は後にライブでMELLを真正面からカバーするような実力や一面も持つわけで、そういう曲をやって欲しかったとは言わないけど、どうせならもう少し遊んでも良かったんじゃないかとも思う訳です。ちなみに本作にはfripSide八木沼悟志も、ユニットでセルフカバーした「悲しい星座」を提供しています。大人びた歌唱のハマり方は、fripSide版とは違った魅力。

 

KMFDM "UAIOE"

Uaioe

Uaioe

  • アーティスト:Kmfdm
  • Strike Back
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 ドイツ出身のインダストリアルバンドの3rdアルバム(1989年)。

 

 彼らの "アルバムタイトル5文字縛り" の始まりという記念すべき(?)作品。開幕から野太いラップボーカルが流れてきてまず驚かされるけど、どうやら全9曲中5曲に渡って外部のレゲエボーカリストがフィーチャーされているようで、サウンドもそこに合わせるように、元々持ち合わせていたヒップホップやレゲエやファンクを匂わせる黒い要素がより濃いものに。そしてそれを前作に続き参加したOn-U Sound Recordsの代表・Adrian Sherwoodがミックスを手掛けた一部の楽曲を中心に、ダブ/インダストリアルの方向性でまとめ上げられています。Raymond Watts脱退の穴を埋める策なのか、はたまた実験や模索の一つだったのかは定かではないけど、結果としてそれまで今一つ焦点の定まり切らなかった音楽性に一本筋が通った印象があるし、後の彼らに繋がるファンキーなインダストリアルダンスという土台も確立された感も。大勢の外部ゲストと作り上げるというスタイルもKMFDMの原点とも言えそうだし、中でもEinstürzende NeubautenのFM Einheitと共作したシングル曲「More & Faster 243」は、後の代表曲と比較してもそれほど遜色ないくらい。本作を初期の傑作と評する声もあるけど、それも頷ける出来。