MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

American Head Charge "The War Of Art"

War of Art

War of Art

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 アメリカ/ミネソタ出身のニューメタル/インダストリアルメタルバンドの2ndアルバム(2001年)。

 

 Slipknotの来日公演の前座も務めたバンド。複数人が担当するギターやキーボード、そこに加わるサンプリングやプログラミングなど、7人編成という特色を生かした厚みのあるサウンドと、そこに絡むシャウトやラップボーカル等で前のめりな激しさを演出。大所帯であることや、Rick Rubinプロデュースという点からはSlipknotと共通点があるし、のっぺりとしたサビのメロディは何となくFear Factoryっぽくもあり。一応インダストリアルメタルにも分類されるようだけど、機械や電気を駆使したインダストリアル色はあまりなし。しかし、キメとタメを強調して一音一音をゆっくり叩きつけるように、かつ複雑に刻まれるリフだったり、1曲の中で極端に強弱をチェンジする場面も多く、曲間の繋ぎにも意味を持たせたりと、とにかく楽曲の作りが凝られている印象。インディーズ作である1stアルバムと収録曲の多くが被っていることから、本作が彼らの実質的な一作目とも位置づけられそうだけど、全16曲68分超というボリュームと相まって単調に、そして文字通り「重たく」感じます。聴くのに疲れる。良く言えば要素が盛り沢山とも言えるけど、最終的には何がやりたいのかもうちょっと定めて欲しかった。

 

ROSEN KREUZ / THE CRACK EDGE MONSTERS' MOVIE SIMULATION RAPE OF FRENCH CULT

 後にDEF.MASTERで活躍するベーシストYU-MIが、DEF.MASTER以前に在籍していたゴシック/インダストリアルバンドの2ndアルバム。

 

 まずアルバム名の長さに面食らいますね。サブタイトルではなくまとめて正式タイトルのはず。そして曲名も同様に長く、1曲目が「LOUD SONIC CHAIN SAW YOUR MACHINE, EXTACY」。意味がよく分からないけど、その響きだけで何だか最高じゃないですか?そして名は体を表すとでも言うべきか、高速で繰り出されるスラッシュギター&デジタルシンセが融合したリフ、チェーンソーやらドリルのような機械音のサンプリングが渾然一体となって襲ってくるという、まるでMinistryの同時代の代表曲「Thieves」や「Burning Inside」を彷彿とさせる迫力と禍々しさ。エレクトロニックを中心に置いた曲、逆にジャパメタな曲もあるけど、特にハイスピードな曲の破壊力やサウンドの有りようは、彼らが強い影響を受けたであろうMinistryがスラッシュメタルを取り入れて行った変遷が重なるし、彼らの出自でもあるゴシック/ポジティブパンクの空気感も相まって、とても強い衝撃を生んでいます。当時としてもかなりぶっ飛んだ音だったと思うけど(ライブではもっと激しかったいう逸話も)今の時代に改めて聴いても打ちのめされるものがあります。日本のインダストリアル(ロック)の数少ない、そして間違いなくマストな一枚。

 

KOTOKO / KOTOKO ANIME'S COMPILATION BEST

ANIME'S COMPILATION BEST<通常盤>

ANIME'S COMPILATION BEST<通常盤>

 

  I've専属(当時)ボーカリスト/シンガーソングライターの編集盤。

 

 一応はKOTOKOのメジャーデビュー5周年を記念した、初の(そして現在においても唯一の)ベストアルバムということになっているけど、実際のところはアニメタイアップのついたシングルA面曲を収録したコンピレーション。なので、一部ではあるけど収録されていないシングル曲もあるし、アニメタイアップのついた非シングルの名曲(「Suppuration -core-」など)も当然収録されていない。本当に作品タイトル以外の何物でもないというか。もっと言うと、メジャーデビュー前にI'veで歌っていた楽曲も当然選曲対象外で、名バラード、電波ソング、マニアックなインダストリアル系の楽曲などを器用に歌いこなすKOTOKOのゼネラリスト的な魅力は本作では一切伝わらないのが、古参のファンにはちょっともどかしいかも。まぁI've初期からの膨大なアーカイブからメジャー後までを含め、彼女の多面的な表情や実力を網羅するようなベスト盤を作ろうとしたら、この時点でもディスク3枚組になりそうなくらいなので、あくまでも本作はアニメを通した新規リスナーの門戸として、また従来ファンにとってはアルバム未収録の一部シングル曲を回収するアイテムとして割り切ると吉。「Re-sublimity」「Face of Fact」「being」などは文句なしに彼女の代表曲ですしね。

 

girugamesh / GO

GO

GO

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 4人組ロックバンドの5thアルバム(2011年)。

 

 再生すると、清涼飲料水のCMソングかと聴き紛わんばかりのウルトラ爽やかなラブソングが入れ代わり立ち代わり流れてきて脱力。初めて聴いたときは開いた口が塞がりませんでした。形は悪くない出来だけど、これまでの音楽性を考えると「これを彼らがやる意味はどこに?」と腑に落ちない感情に包まれること必至。前作「NOW」でもかなりポップ化は進んでいたのに、それを超えてくるという。好みにもよるけど、多くのファンにとってはダメなポップ化の見本みたいに映りそう。実際、本作発表時は「自分たちの音楽をお茶の間に届けたかった」とのことだったけど、ずっと後に「当時は事務所に言われるがままだった」と種明かし。そして本作リリース後に解散寸前の活動休止…と、バンドが明らかに大きく迷走していたこの時期を象徴するような迷作となりました。ヘヴィなダンスロック「MISSION CODE」、ウェディングパンク(何だそれ)「Never ending story」というライブで定番化した名曲という救いもあるけど、後のベスト盤に強化され収録されたので、今手に取る場合の本作の価値はと言うと…個人的には哀愁の表現が秀でているラスト曲の「イノチノキ」くらい。ちなみに初回盤は丸々1枚のライブ盤や内容色々のDVDが付いてお得。ファンへの埋め合わせってのは考えすぎか。あるいは怖いもの見たさ的に聴いてみるのも一興かも。

 

Delerium / Poem

Poem

Poem

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 Front Line Assemblyのメンバーを中心としたエレクトロニカ/アンビエントプロジェクトの10thアルバム(2001年)。

 

 プロジェクト発足以来ずっと関わっていたもう一人のプロデューサー・Rhys Fulberが(一時的に)離脱し、そこに同時期にBill ReebとFLAでの活動を共にしたChris Petersonが合流し制作にあたった作品。音楽性と表現において早くも一つの到達点に達したとも言える前作からの延長を目指したような佇まいで、延長と言っても更に同じ方向を究める…というよりも、歌モノの楽曲の強化を優先しながら、より親しみやすく聴きやすいものを目指したような印象。明らかに女性ボーカルメインの楽曲の比率や存在感が強まり、それも口ずさめるような歌メロと、それを生かすことを前提にした分かりやすく耳を引くアレンジの合わせ技で、聴く者の心を貪欲に掴みにかかります。前年に、前作収録の「Silence」(のリミックス)が各地で注目を集め、賞を受賞するなどの成功があり、その影響があったのか、それとも既定路線だったのかは定かではないけれど、新しい層の開拓向けとしては確かにこちらに軍配が上がるかも。キャッチーさを増したと言っても一切安っぽくなっておらず、アコギの滑らかなフレーズや躍動的なアップビートなどが増えても全体の透明感を保った民族音楽調の幻想性は据え置きだし、「Innocente」を歌うLeigh Nashの素朴な歌声や、「Fallen Icons」の儚さ爆発(何だそれ)メロディなどは実に素晴らしいフック。次作はよりポップスに接近するので今となっては橋渡し的なアルバムなれど、決して捨て置けない傑作。