MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

島みやえい子 / ひかりなでしこ

ひかりなでしこ(初回限定盤)【DVD付】

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 I've専属(当時)ボーカリスト/シンガーソングライターの2ndアルバム。

 

 これまで同様に総合的なプロデュースはI'veだけど、曲ごとの編曲にはI've外の作家の参加が作品ごとに増加傾向にあり、作品の内容もそれを示すように少しずつ様変わりしています。鮮やかなシンセのメロディやダンスビートが牽引するような、いかにもI'veな楽曲の存在感は後退気味で、その分彼女の歌の力や凝りに凝った多重コーラスに重きを置き、タイプは違えどその良さを引き出すことや引き立たせることに徹したようなシンプルな作り、穏やかな曲調が印象的。そもそもが自身のアニメタイアップ曲を「武装した自分」と称し、本作のような作風を「本来の自分」と客観視するくらいの視野を持ち、その上でどういった形であろうと己の世界を保ったまま歌いこなしてしまう実力のある人なので、変化というよりは深化が表れているという表現が適切だし、1st同様に間違いない完成度でもあります。神々しさ溢れるタイトル曲「ひかりなでしこ」なんかはそれこそメジャーデビュー前から存在した世界観の極致みたいな凄みのある曲だし、アニメ「ひぐらしのなく頃に解」のテーマ曲「奈落の花」における神秘性/攻撃性も圧巻。後者のような曲がたくさん入ってるのを期待するアルバムではないのは確かだけど、好盤に違いはないです。

 

Flesh Field / Strain

Strain

Strain

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 アメリカ/オハイオ出身のダークエレクトロ/エレクトロインダストリアルユニットの3rdアルバム(2004年)。

 

 1~2作目まで女性ボーカルを担当したRian Millerが脱退し、本作より新たな女性ボーカリスト・Wendy Yankoを迎えて完成をみた3年ぶり3作目。強めにリズムが打ち鳴らされるEBM~ダークエレクトロという基本線はそのままに、前作までは(恐らく)封じていたギターを大胆に投入。メタリックというよりはノイジーな質感を与えるような用途で、直接的に耳を襲う激しさや煩さを加えつつ、オーケストレーションクワイアを巧みに使用するゴシックな世界観との合わせ技で一枚上の表現へ。打ち込みやエレクトロニックの鳴らされ方も、多彩になりつつもあくまでも機械的/SF的な質感を優先する形で彼らのアプローチの基盤を支えているし、男女のボーカルはともに奥まった位置でエフェクティブに配置され、オケを引き立てるような役割を目指したであろう割り切り方が上手く噛み合い、全体の整合性を確かなものにしています。歌メロに重きを置く音楽性ではないにしろ、やはり「これだ!」という一曲が欲しいというのはあるんだけど、全体的な完成度は明らかに向上。ただ聴き流すだけでも相当おいしいサウンドです。インダストリアルメタルの領域にも片足を突っ込んでいるような感触もあるので、何となく共通点が見い出せるCircle Of DustやKMFDMあたりが好きな人は是非とも聴いてみては。個人的にも、あまりゴシックに寄ると好みから外れるんだけど、この作品にはかなり惹き込まれました。

 

BUCK-TICK / 天使のリボルバー

天使のリボルバー(初回生産限定盤)(DVD付)

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  5人組ロックバンドの15thアルバム。

 

 メジャーデビュー20周年の節目に制作された記念すべきアルバム。前作にあたる「十三階は月光」の大仰なゴシックの世界から一転、かなりシンプルかつストレートなロックンロールにシフトチェンジ。元々アルバムごとに作風を大きく変えるバンドでもあるし、一つの方向性で濃い作品を作ると、その反動を次回作で形にすることもあったけど、この変化(回帰?)もまた驚かされるものがありました。デジタル/エレクトロニックな要素をオミットしたバンドサウンドという構造だけは共通ではあるけど、閉じた世界観でディープに作り込まれた前作と比較すると、驚くほど開かれたムードで耳馴染みが良く、聴く人を選ばない一枚とも言えそう。コアなファンにとってはそこがちょっと薄味で物足りないと映る向きもあるかも知れないけど、これだけ年輪を重ねてきたバンドが、ここに来てまだこれほどに瑞々しく、同時に安定感と説得力もあるグルーヴを聴かせてくれるというだけでも嬉しくなります。新しい王道を感じさせる「RANDEZVOUS ~ランデブー~」は名曲だし、個人的には星野英彦作曲「Snow White」も大好き。ホワイトアウトを連想させる緊張感のあるサウンドに「真白な世界/眠れる君の夢か 幻/たった一筋/モノクロームの頬に紅差す」と強烈に情景を喚起させる詞がマッチした渾身のバラード。

 

Ice "Bad Blood"

Bad Blood

Bad Blood

  • アーティスト:Ice
  • Reprise
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 イギリス出身のダブ/インダストリアルシーンのマルチミュージシャン/プロデューサー・Kevin MartinとGodflesh等で活動するJustin Broadrickの2人を中心としたインダストリアルヒップホップバンドの2ndアルバム(1998年)。

 

 当時のフリージャズ/インダストリアルメタルユニット・Godにて中心を担った両名による別名義のバンド。当時の2人はTechno Animalとしても活動したり、Justin BroadrickがソロプロジェクトのFinalを再始動させたりと、創作意欲の赴くままに幅広い活動を行っていた時期のようで、その流れでダブやヒップホップビートをより追求したのがこのIceのようです。結成(1993)年にリリースした1作目はGodfleshやGodの延長のようだったみたいで(未聴)、数年の休止・Godの解散を経てリリースされた最終作でもあるこの2作目は、オルタナティブ/アンダーグラウンドヒップホップ界隈にて活動するDJやラッパー、Einstürzende NeubautenのBlixa Bargerdをゲストボーカルに迎え、本格的にインダストリアルヒップホップに向き合った作品のようです。ダブやヒップホップをベースにした沈鬱かつ重圧的なトラックと、インダストリアルな感触の強いノイジーな残響音の中に生気の無いラップボーカルが言葉を紡いでいく内容で、真綿で首を締められるようなじわじわとした圧迫感、温度感の無さがとても刺激的。ラップミュージックの手法を実験性やノイズに変換し、特化させた作品としてかなり興味深く仕上がっているかと。相当にマニアックな感触だけど、参加した面々に覚えがある人にはかなりの好盤にもなり得る…と言いたいところだけど、Iceのアルバムは2作品とも入手困難の模様。Iceは本作限りで解散したけど、ヒップホップの影響や要素は今後の彼らの活動にもずっと根づいており(一部の人物は、後のTechno Animal「The Brotherhood Of The Bomb」の制作にも関わる)、そこには本作の成果がとても大きかったのではないかと思います。

 

harshrealm / [arrhythmia/blood of another]

[arrhythmia/blood of another]

[arrhythmia/blood of another]

 

 2人組エレクトロニック/インダストリアルロックバンドのリミックスアルバム。

 

 1stアルバム「[she/underwater]」からの2作目となるリミックス集で、本作もUK、US、イスラエル、フランス、ブラジルなど世界各国のリミキサー/クリエイターが参加。全体的にトランス/テクノ、フューチャーポップ、アンビエントダブステップなどのクラブ系リミックスが多い印象があり、原曲の断片を元に別物のダンスミュージックとして再構築しているような聴き心地。狙いがあったかは分からないけど、1作目と比べたらかなり大胆に原曲のイメージとかけ離れたアレンジが多く、リミックスアルバムかくあるべしといった感じ。意欲的な楽曲もあるけど、一本調子な楽曲も多く、やはりここまで無菌状態で小奇麗にまとめられると、彼らが本来持つ色気みたいなものが漂白されてしまい、どうにも退屈。実際、良いなと思う曲は何かしらの特徴や分かりやすいポイントがあったりするし(ラウンジミックスやセルフリミックス等)。収録曲の多さもそこに拍車をかける形になっているかな。ラストに収められたRazed In Blackのリミックスもやけに地味。1作目くらいのバランスでまとめて欲しかったかも。