MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Pitchshifter / Deviant

Deviant

Deviant

 

 UK出身のインダストリアルロックバンドの5thアルバム。

 

 エリザベス女王ローマ法王の顔を合体させたジャケットがインパクトのある本作。しかしそこまでバンドを引っ張っていたギタリスト・Johnny Carterの脱退が影響してか、前作で魅せたドラムンベース/ジャングルを下地としたデジタルサイバーロック感が消失し、全体的にややスローダウンしたインダストリアル風ヘヴィロックになっちゃいました。サンプリングも目立たない位置に引っ込み、サウンドの有りようがすっかり没個性化。それなりに軽快なスピード感を残す曲もあるにはあるし、元Dead KennedysのJello Biafraが参加した「As Seen On TV」も聴きどころだけど、テンションの低い曲もちょいちょい挟まるので全体の印象がパッとしない。これは個人的に後期のStatic-Xに感じたガッカリ感に似ていました。単体で見るとそんなに悪い作品ではないとは思うけど、ありがちなアメリカ型インダストリアルロックとは異なる魅力を確立させた傑作の前作とどうしても比較してみてしまうし、なんならもっと遥かにコアな音楽性だった初期を思い返すと、その変化に尚クラクラしてしまいます。

 

I've / I've MANIA Tracks Vol.I

 北海道に拠点を置き、アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによる編集盤。

 

 2007年冬のコミックマーケット及び通信販売で限定発売されたもので、I'veの膨大なアーカイヴから、通常のガールズコンピ盤には収録不可能な楽曲や、当時では既に入手困難になっていた貴重音源などを詰め合わせたレアコンピ盤という内容。何と言ってもKOTOKOが謎のボーカルという設定のバンドユニット「Outer」のオリジナル楽曲が複数収録されたというのは非常に大きく、I've内では群を抜いてダークで攻撃的、かつ挑発的な作風を披露。他にも、細かいバージョン違いや古いレパートリーのボーカル違いなどの曲でコアなファンが原曲との違いを楽める部分もあるし(しかも軒並み出来が良い)、川田まみの「Lythrum」を始め、こういう主旨の作品にしか収録が叶わなかったであろう隠れた名曲の存在も嬉しく、I've歌姫総出演のSpecial Unitによるバラードで大団円の〆という流れも最高。女性ボーカルという制約すら存在しないため、ゲームキャラ名義やC.G mixのソロなど男性ボーカルの曲すらも混在し、作風にしろ年代にしろ、全体的な振れ幅はいつも以上。しかし全体像としては、そういう凸凹が逆にI'veというチームの魅力を色んな面から浮き立たせているのが面白い。タイトル通りマニアックなアイテムながら裏ベストとしても楽しめそうな逸品。

 

harshrealm / [lies/cold display]

[lies/cold display]

[lies/cold display]

 

  2人組エレクトロニック/インダストリアルロックバンドのリミックスアルバム。

 

 1stアルバム「[she/underwater]」からのリミックスアルバム。このアルバムにもボーナストラック的にリミックスが収録されていたけど、それらとはまた異なった趣が楽しめます。リミキサーはUS、カナダ、ドイツ、スウェーデンなど様々な海外のクリエイター/アーティストを起用。EBM/フューチャーポップ/トリップホップなどにアレンジされた色とりどりなダンストラックが楽しめる前半もいいし、より硬質/マニアックなインダストリアルメタルに変貌した中盤のセルフリミックスを経て、音数を絞られたアンビエント/トランスが展開する後半という流れもいい。彼らの曲がもともと幅広いエレクトロニック音楽に深い造詣を持つので、リミックスの懐が深いというのもポイントかも。あえてかどうかは知らないけど、沢山の候補があったであろう1stの中から5種の曲のみ選出と簡潔だし、無駄に長かったり自己満足なリミックスもなく、全体のボリュームも全9曲と抑えめなので、散漫にならず聴けるのがとても良いです。ラストを飾るのはSybreedのメンバーが手がけたリミックス。本隊バンドほどマシーナリーなメタルではないけど、どこかそれを彷彿とさせる奥行きのあるシンセが加わり心地いい。

harshrealm / [she/underwater]

[she/underwater]

[she/underwater]

 

 2人組エレクトロニック/インダストリアルロックバンドの1stアルバム。

 

 1stシングル収録の2曲を含み、それらの先行して発表した楽曲を軸に拡充した世界を提示。大別すると、例えばCrossbreedや彼らと親交のあるProfessional Murder Musicにも似たシンセ主体/ゴス風味/インダストリアル要素を持つロックだけど、ありがちなニューメタルをベースにした大味なものではなく、あくまでもEBM/トランス/エレクトロニカ/へヴィロック等を巧みに通過した上での多彩さ、重厚さ、また相反する浮遊感を感じさせます。アグレッシブなリフを繰り出す攻撃的な曲から、ピアノ/エレクトロで静謐に聴かせる曲まで幅があり、デジタル/プログラミングも多用していながらも、流れ良く、また泰然と紡がれる芯の通った退廃的で陰影の深いサウンドは「ヨーロッパの湿気」とも称されたそう。ダークネス/へヴィネス/メランコリーのバランスが見事で、かつちゃんとポップなのが嬉しいところ。ちなみに元KMFDMのEn EschやGünter Schulzが一部ゲスト参加しているというインダストリアルロックファンには注目のトピックも。初めて聴いたときは、彼らの情報の少なさから来るミステリアスな印象、魅惑的なアートワーク、また日本のバンドからこんな作品が生まれるんだという驚きもあって、相当な衝撃を受けたものでした。全体的な水準はかなり高いと思うし、そういう個人的な思い入れや相性も手伝って、何年も経った今でも色褪せない作品として君臨しています。当ブログ推奨盤。

 

harshrealm / [harshrealm/strange days]

[harshrealm/strange days]

[harshrealm/strange days]

 

 福岡を拠点に活動する2人組エレクトロニック/インダストリアルロックバンドの1stシングル。CD化されているシングルとしては唯一のもの。

 

 詳しくは知らないけど「Goth Electro Tribute To Depeche Mode」や「DJ RiB Dark Trance Vs. Neo-Goth Volume 1」といったCleopatra Recordsの新鋭ゴス系コンピレーション盤に参加実績のあるバンドのようです。音楽性もゴス風味を効かせたエレクトロニックロックど真ん中で、Professional Muder Musicが関与した曲や、Razed In Blackが提供/プロデュースした曲があり、そのままそれらのバンドの音楽性が投影されているかのようで、緻密に構築されたシンセ/ギター/打ち込みのサウンドプロダクションがさすがに素晴らしいの一言。ボーカルにやや癖はあれど、メロディも十分に洗練されており、耽美な歌モノとしてもなかなかなもの。ドメスティックな空気感や地下ゴスっぽい粗さが一切なく、全英詞なことも手伝って海外バンドのような聴き心地ではあるけど、ただの借り物ではなくきっちり彼らの血肉とした上で表現しているような佇まいがあり、初の単独音源にしてこの説得力はちょっと凄いです。ちなみに本作には、かつて管理人が多大な影響を受けたWebサイト「coldburn」管理人のAsakoさん(@coldburn123)がthanksにクレジットされており、それに後から気づいてすごく驚いたという思い出があります。

 

(「Goth Electro Tribute To Depeche Mode」より)