MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

girugamesh / Girugamesh

Girugamesh

Girugamesh

Amazon

 4人組ロックバンドの2ndアルバム(2007年)。

 

 プロデュースやコーラスなどに昵懇の先輩バンドであるムックのメンバーが一部参加。そんな心強いバックアップに加え、1stアルバムとの間に意欲作ミニアルバムを挟んだ成果も手伝ってか、大きな成長を感じる一枚。楽曲単位でみても、クオリティの上昇はもちろん小技の使い方や緩急のつけ方、全体でみても振れ幅の拡大といった部分は明らかに進歩しているし、アグレッシブな楽曲の連打で圧をかける前半、タイプの違うメロディアスなナンバーで魅せる中盤、感情を吐き出しシリアスに散っていく終盤と順序立てた流れも秀逸。荒削りで単調気味だった1stと比較すると全体を通して格段に聴かせてくれます。Slipknotの影響というより模倣の「stupid」やタイトルまんまダンサブルな「Dance Rock Night」といった変化球を盛り込む余裕も含め、総じてここまでの彼らの "黒スーツを纏ったヴィジュアル系ラウド時代" の集大成的内容。セルフタイトルを冠したのもそういった自負の表れではないかと。ヴィジュアル系と言っても自己陶酔的な儚さなどとは無縁の "男魂" が根本にあるし、そのサウンドは海外でも受けたらしく、本作リリース後はヨーロッパツアーに出たり、世界的メタルフェスのWacken Open Airへの出演も果たしたりといった展開にも繋がったようです。

 

Revolting Cocks / Beers, Steers & Queers

Beers Steers & Queers

Beers Steers & Queers

 

 MinistryのAl Jourgensenによるサイドプロジェクトの2ndアルバム(1990年)。

 

 ライブアルバム(未聴)を挟んでのリリース。まさに1stで確立した路線をそのまま突き詰めて順当に完成度を高めたという感じで、強靭なダンスビート/ハンマービートの上をタフなベースラインと自由度の高いボーカルと悪ふざけのようなサンプリングが往来する怒涛の変態EBM。1stにあった無機質さや未完成な余白がきっちり埋められ、喧噪と享楽をモットーにしたかのようなファンキーなインダストリアルダンスが圧巻の一言だし、曲によってはMinistryがメタルギターを取り入れ始めた1989年前後の作品がまとうおどろおどろしさやスリリングさも合わせ持っており、その落差もまた格好いい。もしかしたらいい意味で影響を与え合っていたのかも。その辺りのサウンドが好きな人にはジャストだと思うし、個人的にはこの自由かつ粗暴なパワーは初期のFoetusを思い起こさせるものもありました。EBM愛好家にはメタル化以降のMinistryよりも評価を高くする向きもあるというのも納得。彼らが(2006年の復活以前に)残した3作品の中では随一の傑作なのではないでしょうか。

 

girugamesh / Reason of crying

 4人組ロックバンドのミニアルバム(2007年)。

 

 前フルアルバムから約10カ月ぶりとなった、書き下ろしの楽曲5曲(+α)で構成されたミニアルバム。ヘヴィなサウンドを軸に置いたスタイルを踏襲しながら、一部で必要に応じて打ち込み(スクラッチ、リズムトラック、ピアノ等)をアクセント的に取り入れるなどの変化があり、ボーカリスト・左迅の歌にも大きな向上が見られ、時には激しいシャウトからラップまで自在に歌いこなす。こういった表現の拡大がそのままバンドの個性の強化に繋がり、明らかなパワーアップが見て取れます。特にオープニング曲「Real my place」は切れ味からしてそれまでと一線を画すフックがある佳曲。何でこの曲が後のベストアルバムやラストライブに選出されなかったのかが個人的に不思議なくらい。また通常盤のみに収録された限定シングル曲「お前に捧げる醜い声」も、ムックの「茫然自失」の大きな影響を感じるけど、ひたすらに激情を叩きつけるその猛烈なパワーでライブの定番かつバンドを代表するまでになった必聴曲。彼らのその後の躍進に繋がった作品ではないかと思います。

 

girugamesh / 13's reborn

13’s reborn

13’s reborn

Amazon

 4人組ロックバンドの1stアルバム(2006年)。

 

 2004年から活動を開始し、2016年の解散まで籍を置いた事務所に所属してからの初となったフルアルバム。タイトルはそれまでに発表した配布/限定を含む13の音源の総決算を意味する…かどうかは定かではないですが(そもそも13かどうかもよく知らん)、いくつかの収録曲は引き継がれています。2000年台初頭に起こった海外ニューメタルのブームや、それに影響を受けた当時のヴィジュアル系シーンの血筋を受け継いだへヴィなロックを主軸とし、 "男魂" というバンドコンセプトを掲げる通りに媚びを感じさせない骨太さやシリアスさがあるし、親しみやすい歌と激しいシャウトを行き来する左迅のボーカルも既にバンドの大きな武器になっています。ただ、後に更にミクスチャーやメタルコア方面へ傾倒することでより彼ららしいスタイルを確立していくので、本作の打ち込みなどの音がほとんどなく生音メインでゴリゴリと押すムードは、後追いで比べるとサウンド面で言えば明らかに発展途上。楽曲面では光るものもあるけど、汎ヴィジュアル系臭さが抜けきれてない部分なんかもやはり若さを感じさせます。年季の入った彼らのファンは、本作を傑作と推す人も少なくないみたいだけど。後のベスト盤に収録された「遮断」、バンドの歴史を通しても最大クラスの人気曲「終わりと未来」あたりは要チェックの佳曲。

 

C.G mix / in your life

in your life

in your life

 

 I'veのクリエイター兼ボーカリストの1stアルバム。

 

 名だたるI'veの作家陣の中で、唯一I've内での歌手活動もしている彼。とはいえ彼が受け持つボーカル曲はかなり少ないし、ガールズコンピ盤には収録されないので(当たり前だけど)普通にI'veを追っているだけでは耳にする機会は非常に少ないです。本作はそんな彼の貴重なボーカル担当曲を収録しつつ、同時にアーティストとしての側面を表現したソロ作品となっています。内容に関しては彼の音楽的バックボーンであろうどこか懐かしい往年のシンセポップ的だったり(というかぶっちゃけ小室哲哉っぽい)健全な鍵盤バンドサウンドの歌モノだったりであまりこれといった尖り方はしてないです。I've参加のずっと前に歌手デビューの経歴がある割にはボーカルもあまり上手ではなく、難易度の高い高音や早口パートでは粗も見られたり。MVが作られた「version up」やI've歌姫のMELLがコーラスで参加した「DETECT」は攻撃的だけど、他の曲は平坦で印象薄。彼が手がけたI've曲は正統派から電波まで素晴らしい曲が多いのに、本作はそういうイメージがサウンドにも曲にも無いので、そういうのを期待する人が手に取る必要はなさそう。I'veとTM NETWORKの両方が好きな人は聴いてみては(謎)。