MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

anokthus / APOTHEOSIS

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 東京を拠点に音楽活動をする@anokthusさんの1stアルバム(2013年)。

 

 高密度に圧縮されたハードコアインダストリアル。歪んだキック、削岩機のようなビート、金属の擦れるような打撃音や機械的な効果音、ハーシュノイズなどが一体となって情け容赦なく襲いかかる破壊的なサウンド。Ant-Zen(ドイツのリズミックノイズ系の一大レーベル)から輩出されてそうな音楽で、けたたましく響き渡る轟音はコアなインダストリアルリスナーが歓喜するようなツボをビシバシ突いてきます。そう言いつつ管理人はAnt-Zen周辺やパワーノイズ等と呼ばれるジャンルに疎く、基本的にはポピュラーなインダストリアルロックが好き。では本作は難解で理解できないかと言うとそうでもなく、荒涼とした曲から壊れたコンピュータがエラーを吐き続けるような曲まで魅せ方も豊富で飽きさせないし、規則的かつフィジカルなビートで進行するためにどこか過激なダンスミュージックのようで、ある種の親しみやすさすらも感じ、全く無理なく楽しむことが出来ました。一定のジャンルに捉われず、刺激的な電子音楽を求める人への広い受け皿にすらなり得そうな作品。

 

Godflesh / Love And Hate In Dub

Love & Hate in Dub

Love & Hate in Dub

 

 UK出身のインダストリアルメタル/ポストメタルバンドのリミックスアルバム。

 

 4thアルバム「Songs Of Love And Hate」からセレクトされた楽曲のリミックスや別バージョンで構成されており、タイトル通り、ダブを中心としながらブレイクビーツアンビエント方面のアプローチでほぼ統一されています。過去にシングルやEPにリミックス曲を複数収録したりと彼らはこういう活動は積極的に行っているけど、1枚まるごとリミックスというのは今作が最初(で今のところ最後)。思い切ってる。そして過去のリミックス曲よりも更にGodfleshらしい重機のような凶悪さとの融合が図られているし、元になった4thアルバムは彼らの中で初めて人力のドラムで制作されたという異色作でもあったため、"本来のリズムマシンで改めて再構築した4thアルバム"という視点で捉えてもいいだろうし、いずれにせよ他のどの作品とも違った毛色で楽しめそう。冷たく響くドラムと濁りきったベースが、感情を排除したかのようなドゥームインダストリアルの世界に誘う。Godflesh以外の何ものでもないサウンドにはやはり問答無用で惹き込まれちゃいます。特に鋭利なノイズと散発的なドラムが撃ち込まれる「Almost Heaven (Helldub)」は文字通り地獄のBGM。リミックスだと侮るなかれ、マストなアルバム。

 

Nine Inch Nails / Year Zero

Year Zero

Year Zero

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  US出身のTrent Reznorを中心としたインダストリアルロックバンドの5thアルバム。

 

 すっかり寡作の大物というイメージがついていた当時の彼らにしては、約2年振りという比較的速いスピードでのリリースとなった本作。詳しくは知らないけど、終焉した近未来を描くことで(当時の)米国政府を批判するというコンセプトがあり、アルバム以外でも色々な仕掛けを施した一大プロジェクトだった模様。過去を清算したお陰か速やかに伝えたいメッセージがあったからか、いずれにせよ創作意欲に溢れていたのは良いことだと思います。その作風は前作の比較的ストレートなバンド路線を踏襲することなく、全面的に打ち込みのサウンドへ移行。ただし90年代インダストリアルロックへの回帰では全くなく、尖りに尖ったエレクトロニックやノイズを駆使して骨組み重視で構築された新境地といった感じで、巧みを凝らしたリズムトラックやビープな電子音やキリキリと鳴らされるノイズが抑揚をつけながら入り乱れる様は、狂気や暗黒美というよりは純粋な音楽的欲求や実験から生まれたような風通しの良さが感じられます。分かりやすいキャッチーな曲があまり無いことや、全体的にコンピュータ制御されたような無機質な作りは好みを分けそうだけど、根幹の部分はあくまできっちりポップに作られているし、やはり唯一無二の存在感は健在。そしてNine Inch Nailsらしさを失わないまま新しいものを生み出そうとする姿勢は素晴らしいと思います。個人的には結構好き。

 

Numb / Death On The Installment Plan

Death on the Installment Plan

Death on the Installment Plan

 

 カナダ出身のエレクトロインダストリアル/EBMユニットの3rdアルバム。

 

 もともと彼らが持っていた強烈なノイズを絡めたEBMとしての特質的な個性が研ぎ澄まされ、楽曲の完成度が格段に向上。楽曲単位でもアルバム全体の流れとしても緩急の付け方/見せ方がより鮮烈になり、先の読めない曲展開で聴き手の興味を引き寄せながら、大胆なノイズ/サンプリングが幾重にも応酬する作品の奥深くへ引きずり込んでいきます。ノイズの使い方も電気加工され、インダストリアル然とした独特の心地悪さを纏っていて、ダークアンビエント的な表現も荒廃/暴力的なパワーに溢れていて聴き惚れてしまいます。最初に聴いたときの第一印象は「まるで騙し絵を見ているよう」でした。それくらい異形で狂気的。Skinny Puppyの影響を多分に感じさせつつ、Nitzer Ebbのビート感やMinistryにも通じるパワーすら感じさせる面もありながら、それが決して凡庸なフォロワーとしてではなく、とても鋭く磨き抜かれた一つの個性として存在することが驚嘆の一言。彼らがどれくらいの評価や知名度を得ているかはよく知らないけど、この作品は90年代インダストリアルの名盤に数えられてもおかしくない傑作だと思います。