MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Cyberaktif / Tenebrae Vision

Tenebrae Vision by Cyberaktif (1993-04-08) 【並行輸入品】

Tenebrae Vision by Cyberaktif (1993-04-08) 【並行輸入品】

 

 Skinny PuppyのCevin Key、Front Line AssemblyのBill Leebらによるコラボレーションユニットのアルバム(1991年)。

 

インダストリアル/EBM界で名を馳せている二大巨頭の中心メンバーだけでなく、更にEinstürzende NeubautenのBlixa Bargeldも制作に関わっており、なんとも豪華なメンバーがクレジットされた作品。通常ならさぞかし期待してしまうところだけど、蓋を開けてみるとあんまり面白くない。音づかいは所々確かに痺れるものはあるし、初期Nitzer EbbSkinny Puppyといった趣の「Brain Dead Decision」は結構気に入ったけど、トータルではダラダラとした聴き心地で、淡々としすぎたハンマービート/ボディビート・空を切るサンプリング・盛り上がりに欠けるボーカルの組み合わせで刺激に欠け、元ユニットの雰囲気は端々に感じられるけどその良さはすっかりスポイルされており、何だか中途半端でよく分からない仕上がり。実はこのアルバム、昔インターネット上で見た「EBM/Industrialのスーパーグループはハズレばかり」という定説の代表作だという酷評で存在を知ったもの。故に管理人はそれを確認しつつ怖いもの見たさ的な動機も合わせて聴いてみたわけですが(つまり自業自得)、期待が大きかった人にとってはなるほどそうかも知れないなと納得してしまいました。ゆえにやはりというか、あまりお勧めはできません。

 

God "Possession"

Possession

Possession

  • アーティスト:God
  • Virgin
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 イギリス出身のダブ/インダストリアルシーンのマルチミュージシャン/プロデューサー・Kevin Martinを中心としたフリージャズ/インダストリアルメタルユニットの1stアルバム(1992年)。

 

 1987年にKevin Martinとギタリストの2人で結成され、翌年にGodfleshを始めたばかり?のJustin Broadrickと邂逅し本格始動という経緯があるようです。本作以前にはJustin Broadrickがプロデューサーに就きシングルやライブ盤などをリリースし、初のスタジオ作である本作にはプレイヤーとして参加(多分)。他にはJohn ZornやTim Hodgkinsonなど著名な実験音楽畑のミュージシャンも制作に関わっているようです。内容はスローなグルーヴで反復を繰り返すドラムやダブに接近したベースラインにフィードバックギターがどっしりと重く、GodfleshやScornのような音がよりコアに生で鳴っているといった趣だけど、その上を無軌道に駆け巡るサックスやヒステリックなピアノの合わせ技が衝撃的。音階を奏でるというよりもノイズのような使い方で、先の読めない即興のようなフレーズが無秩序な全体像を加速させています。相当マニアックな音楽だと思うけど、実験音楽やフリージャズに理解のある人だけでなく、GodfleshやEarache Recordsのバンドなんかが好きなら何かしら響くものはあるかも。ただ、彼らのCDは全てが入手困難品の模様(管理人はたまたま本作のみ入手)。Godはあまり評価を得られず終わったそうだけど、こういう実験精神が後の数々のプロジェクトに繋がっていったのだろうと思います。

 

Devin Townsend / The Hummer

The Hummer

The Hummer

  • HevyDevy Records
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 カナダ出身のマルチミュージシャン/プロデューサー・Devin Townsendのソロ通算9作目、Devin Townsend名義での5作目(2006年)。

 

 前作「DevLab」に続くアンビエントアルバム第2弾で、前作同様にレーベルの限定直販CD&DLという形態。今回はちゃんと各曲に曲名がついているけど、15分超の楽曲が2つ、23分の楽曲が1つ(!)を含む全6曲72分超えとやはり一筋縄ではいかなそうな予感。そして再生して驚くのは、前作以上にマニアック…というか本格?アンビエントへ。真空パックされた空間に、低周波の無機質な機械音のようなものがひたすら鳴り続け、やがて残響だけが時間をかけてめちゃくちゃゆっくりと増幅されていったり、鼓動のようなリズムが薄っすら刻まれたり、環境音のようなノイズが垂れ流され続けたり…と、そういった音像がずーっと続きます。あとは3曲目の頭でフルートが鳴るけど、他では映画のサンプリングやモールス信号なども含む箇所もあるのだとか。前作も普段の彼の音楽からは想像もつかないものだったけど、徹底的に引き算されたような本作に比べるとまだインスト音楽としての起伏や展開が考え抜かれているような側面もあったなと思えるほど。さざ波が心地よい最終曲はいくらか光を感じますけどね。普段の彼の音楽とのギャップありきで楽しむべき作品か。しかし万人受けしないという前提で制作するのなら、むしろこのアンビエントアルバムこそ別名義でリリースすればいいのにとお節介にも思ってしまいます。

 

Einstürzende Neubauten / Kollaps

Kollaps

Kollaps

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 ドイツ出身のインダストリアルノイズ/前衛音楽バンドの1stアルバム(1981年)。

 

 インダストリアルミュージックの概念を大きく飛躍させた重要な存在で、紆余曲折を挟みながら現在も活動している伝説的なグループの記念すべき第一作。Blixa Bargeldを中心に結成され、幾度のメンバーチェンジを挟み次なる中心人物となるF.M. Einheitが加入後、メンバー3名編成でのリリース。2ndアルバムからは更なる加入を経て黄金期の5人組となっているので、その隙間に唯一発表されたスタジオアルバムということになります。その内容は強烈の一言。機材が無いから(?)という理由で実際の金属廃材を叩いたり削ったりして生み出されるメタルジャンク音、感情を絞りつくすように垂れ流されるボーカルの歌になりきれていない叫び。彼らの作品の中でも最も原始的で生々しい迫力に溢れています。しかしただの破壊的な衝動だけでなく、自作楽器や独特に生み出した環境音など、幾多の実験を合わせながら新しいスタイルを追求した求道的な精神が感じられ、プログレッシブロックを自称したという逸話も頷けます。ごく個人的な観点で言うと、インダストリアル音楽に今より理解の浅かった時期に初めて聴いたときは、衝撃を受けつつも目が点になったものでした。だけど彼らの影響を受けた音楽をいくつか知った後に改めて聴くと、この作品の強烈さや偉大さに行き着く。そんな "最強の古典" みたいな存在です。

 

 

Dkay.com / Deeper Into The Heart Of Dysfunction

Deeper Into The Heart Of Dysfunction

Deeper Into The Heart Of Dysfunction

  • アーティスト:Dkay.com
  • Underground Inc.
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 ドイツ出身のインダストリアルバンド・Die Kruppsの中心人物Jürgen Englerが、1997年のDie Kruppsの(一時的な)解散の後に結成したグループの2ndアルバム(2002年)。

 

一言で言えば "インダストリアル/ニューウェイブサウンドを下地にメタル度を高めていった" 後期Die Krupps(かなり雑な説明)の流れを裏切ったDkay.comとしての1stアルバムは、色んな要素がごった煮で何が出てくるかわからないところが面白く聴けました。そういう意味では、今回のこの2ndアルバムはメタルギターをはっきりと全面に出して往年のインダストリアルロックに回帰しているように見受けられ、逆に方向性を定めてきたと言えるかも。ただ新しい何かを提示するまでには至らず、かと言って後半の良曲ラッシュの部分以外の楽曲はどうにもパワー不足。結果として既視感が大きく新鮮味に欠け、全18曲というボリュームも長く感じるだけで、全体としては物足りない印象が勝ってしまう。もちろん並のインダストリアルロックバンドは寄せつけないくらいの完成度はあると思うんだけど、彼らのキャリアや別名バンドとしてリスタートした経緯を思えば、もうちょっと驚きを提供してほしかったなと。本家Die Kruppsの活動再開にともない本ユニットは休止したようなので、今後はそちらで暴れてもらえたら。